第2章 私もどこかで…
隊からのスカウトなんて願ってもいないこと
あのときの言葉は社交辞令だとばかり思っていた
「じゃあもう一度ちゃんと言っておきますね」
紫苑は喜助を見上げる
「卒業したら十二番隊に来てくれませんか?もちろん琴乃サンも一緒に」
「ほ、本当にいいんですか?!」
「ひよ里サンも納得してますしね。あとで霊術院に正式に文書送っときます」
四番隊を希望してはいたけど、それほど強い気持ちではなかったし、紫苑は何より琴乃と同じ隊に入れるのが嬉しかった
「それで聞いてほしい話があるんスけど…」
「はい…」
喜助は斬魄刀を鞘ごと腰紐から抜き、両手に持ち直す
「前に斬魄刀の話しましたよね?」
「はい、雪姫のことですね」
「ボクの斬魄刀は紅姫って言うんです」
似てる…それが第一印象だった
「似てるでしょ。紫苑サンの雪姫と、ボクの紅姫は姉妹刀なんスよ」
「姉妹刀?」
「本当はもうひとつあって、姫乙女ってのと三姉妹なんスけど」
斬魄刀に姉妹があるなんて、初めて聞いた……あれ?
「そういえば雪姫が、姉に会いたいって呟いてたことがあったかもしれません」
「紅姫のことっスね」
「でもそのためにはえっと……なにかが必要って……」
「具象化じゃないスか?」
「具象化って確か卍解に必要なことのひとつですよね?」
「そっスね。ボクらは精神世界で斬魄刀と対話できるけど、斬魄刀同士は誰かのモノになってしまったら、具象化してこっちの世界に呼ばないと会えないっスからね」
「会わせてあげたいですね」
浦原隊長は隊長さんだから、もちろん卍解ができて、具象化もできるんだろうから、私が具象化をできるようになれば…
「紫苑サン次第っスね」
「頑張ります!」
「試しになんスけど…触ってみてもいいっスか?」
ニヘラと笑って紫苑の雪姫を指差す
「火傷しますよ?」
「琴乃サンは大丈夫なんスよね?」
「そうなんです。理由は教えてくれなかったんですけど」
紫苑はゆっくりと雪姫を抜くと、喜助の前に差し出した
喜助がそっと、鞘に触れると…
バチバチッ─
火花が散り、喜助の指からは煙が上がっていた