第20章 キミが欲しい
「あ、喜助さん、今雪だるま作ってるの!」
「雪だるまっスか」
「私のと、喜助さんのふたつ作るの」
「またそんな可愛いことを」
せっせと雪を集めて丸めていく姿が可愛くていつまでめ見ていたい
と、思ったけどそれも程々にボクは荷物の整理を始めた
「できた!」
どれどれ、と見に行くと小さな雪だるまが2つ
肩を寄せ合うようにくっついていた
「可愛いーっスね」
「ね、見てみて」
そう言うと彼女は雪だるまを、向かい合わせてチューをさせた
ニッコリ笑う彼女の頬や鼻まで赤く、素手で作っていたから手も真っ赤だ
「あぁもう、こんなに冷やして、おいで」
紫苑は素直に部屋に入ると衣服についた雪を落とし、喜助に近づく
赤くなった手を包むように握る喜助さんの体温が伝わってくる
「あったかい…」
「冷えちゃうから温泉入ってきたら?」
実は部屋風呂か混浴…を期待してたんスけど、どうやらここは男女別の大浴場か露天風呂しかないようだ
さすがにシャワーじゃあたたまらないしね
「うん、行ってくるね」
ボクも荷物の整理を終わらせて大浴場へと向かった
…─
部屋にお風呂が、ついてなくてよかったと思った
だって喜助さん絶対一緒に入りまショとか言いそうだから…
顔が火照って熱い
ちょっと長湯しちゃった
寝巻きの浴衣を着て髪を整える
部屋に戻ると喜助さんはもうお風呂をすまして戻っていた
「おかえりなさい」
「た、ただいま」
部屋に入るなり私に近づいてきた喜助さん
すると両手をピタッと私の頬にくっつける
「逆上せた?」
「あ、少しだけ」
さっきはあたたかかった喜助さんの手が今度はひんやりして気持ちいい
「失礼します。お食事をお持ちしました」
豪華な食事が並べられると私は歓喜の声をあげる
「すごーい、美味しそう!」
「ほんとっスねぇ」
食事の端には当たり前のようにお酒が置いてあった
物凄く飲みたい…
お酒の力を借りて、朝からずっと早いスピードで動く心臓をなんとかしたかった
「飲まないんスか?」
喜助さんは既にお猪口にお酒を注いで、私を待っていた
「今日は…やめとこうかなって」
喜助さんは何かを察したように私を見つめると、お猪口を置いた