第19章 何か欲しいものありますか?
「今日は起きないんスね」
「ん…………きすけ……さん」
目を瞑りながら呟く小さな声
「ボクの夢見てるんスか?」
喜助は紫苑の額に小さなキスを落とすと紫苑を抱き締め、自身も眠りに落ちた
…─
朝のひんやりした空気で目が覚める
寒……くない
喜助は普段感じない、じんわりとした温かいぬくもりを感じた
「まだ寝てる…」
お酒のせいか、あれから一度も起きなかったであろう紫苑
まだ仕事まで時間はあるし、寝かせておこう…
お茶でも飲もう、と紫苑を起こさないように静かに布団をでようとした
きゅ
え?
寝息をたてたままの紫苑が、離れようとする喜助の羽織を掴んでいた
「狡いっスよ…」
そんなことされたら動けない…
喜助はお茶を諦めてもう一度布団に入った
喜助がまた浅い眠りに落ちた時、紫苑が目を覚ました
「ん………」
目を開けようとしてもなかなか開かない
すごく心地いい…
ぽかぽかして、ぬくぬくして、いい匂いがする…
この匂いは…
なんとか開いた細目では匂いの主は確認できなかったが、わかる
「ん…起きた?」
脳内に響く大好きな甘い声
でも眠気に掻き消される
唯一開いていた細い目を閉じて目の前の胸板に顔を埋める
「そんなことされるとドキドキしちゃうんスけど…」
「んぅ…」
「紫苑は朝弱いね」
「きすけさん…」
やっと半分開いた目で匂いの主を再確認する
「おはよ、紫苑」
「おはよ……っ!」
急に頭をおさえる
「大丈夫?」
「頭いたい…」
「弱いのにがんばるから…」
そう言って私の頭を撫でて立ち上がると、二日酔いの薬を出してくれた
薬を飲ませるのにゆっくり紫苑を起こす
「ありがと…」
「なんかタメ口紫苑もいいっスね」
「タメ口?」
「だって紫苑いつも敬語でしょ?たまに砕けてくれるけど…」
あんまり意識してはいなかったけど…
「ねぇ、これからもタメ口で話してよ」
「い、意識しますっ」
なんだか照れ臭い
と、普通に話しているけど私、昨日…