第19章 何か欲しいものありますか?
「え?あ、ごめんなさい!」
「紫苑に怒られるのも悪くないっスね」
「なっ…変なこと言わないでください!」
「真面目に言ってるんスけどねぇ…」
そう言って顔の向きを変える時に、私に目線だけを残して…
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
「流し目とか狡い…っ」
「ん?何か言いました?」
「そういうの私以外にやっちゃダメですからね」
「そういうのって?」
自覚無しが一番怖い…
「紫苑ー!隊長ー!いつまでもイチャイチャしてないで、いい加減仕事してくださいー!」
たくさんの書類を持った琴乃がこちらを見て叫んでいる
「イ、イチャイチャしてない!」
「えーもっとイチャイチャしましょうよー」
「喜助ェ、ええ加減にせぇよ?」
いきなり現れたひよ里の目線に、喜助は冷や汗をかく
「は、はい、スミマセン」
「喜助さん、ごめんなさい私のせいで怒られちゃって」
「何言ってるの、紫苑は何も悪くないっスよ」
俯く紫苑の頬に手をやり、自分に向かせる
「喜助さん…」
「紫苑…」
トクントクンと波打つ心臓
頬からじんわり伝わる熱
近づく唇…
「仕事しろ言うとるやろー!!」
ひよ里の声に思わず離れる2人
それだけ言い捨てて去っていった背中を見ながら2人は向かい合って笑った
「戻ろっか」
「はい!」
ちゅ
「えっ…喜助さん、今…」
「しーっ。また怒られちゃうから、ね」
紫苑は口元を押さえて顔を赤くしながら喜助についていく
ふわふわと揺れる月のような色の髪…
大きくて広い背中
高い身長
かっこいいなぁ…
「ん?」
ドキン
こちらを振り向いた喜助さんと目があった
見つめていたなんて知られたら恥ずかしすぎる…
「な、なんでもないです!」
喜助はニッコリ笑って私の頭をポンポンとしていった
好きだなぁ…
「今隊長のこと好きだって思ってたでしょ?」
「琴乃っ!」
後ろから飛び付いてきた琴乃がニヤニヤしてる
「相変わらずお熱いねー」
「ちょっ!もぅっ…」
「こっちまでホカホカしてくるわ」
近頃めっきり寒くなってきた
今年の冬はあったかくなりそ…