第19章 何か欲しいものありますか?
第19章 何か欲しいものありますか?
数日後─
「喜助さん!喜助さん!」
今日も可愛い彼女が名前を呼んでくれる
それだけで1日頑張れるというのに、まるで子犬のように傍に来て尻尾ブンブン振って嬉しそうに笑われたらもう…
「ん?どうしたの?」
時々喜助さんは私と話すとき、あの特徴的なクセがなくなる
意識してるのか無意識なのかわからないけど、私だけが知ってる喜助さんみたいでなんだか嬉しい
「誕生日プレゼント何がいいですか?」
「あれ、知ってたんスか?」
「もちろん!」
実はこないだ配られた瀞霊廷通信のプロフィールで知った…というのは黙っておこうかな
「で、何か欲しいものありますか?」
「んーないっスよ。紫苑が隣にいてくれればそれで」
「…」
返事のない彼女に目をやると、顔を両手で隠してしゃがみこんでいた
「え?!どうしたんスか?どこか気持ち悪い?」
背中をさすると彼女は首を横に振る
「なんでそんな照れるようなこと、さらっと言うんですか…」
「なぁんだ、照れてたの?」
「もぅ!真面目に答えてください!」
「大真面目なんスけど…」
納得できないという彼女のために必死で頭を巡らせる
「あ、じゃあ…」
「なんですかなんですか?」
「今度こそ旅館に行きましょ。そしたら一緒に年越しもできるし、そこで…」
「そこで…?」
喜助がニヤっと笑ったのを見て、紫苑はすぐにその理由に思い当たった
頬を赤くさせていく紫苑を見て、もう口元の緩みが止まらない喜助は紫苑の耳元に顔を近づける
紫苑をボクにください、ね
弱い耳元で、低い声で、痺れるような愛を囁かれたらもう立っていられなかった
ちなみに言うとこの間のあいた後の"ね"が個人的に物凄くクるというか…キュンて
「も、喜助さん…耳元で囁かないでって言ってるのに…」
「だって紫苑の反応が可愛くて」
「でもそんな忙しい時期にお休みとれるんですか?隊長なのに」
「そりゃもちろん、職権乱用っスよ」
紫苑は慌てて喜助の口を両手で塞ぐ
「そういうこと大きな声で言っちゃダメです!」
「えー」
「えーじゃない!」
「紫苑に怒られた」