第18章 ボクの前では我慢しないで
「と、いうところなんスけど…」
喜助は紫苑の顔を恐る恐る覗く
「なんだぁ、そんなことですか!」
「え?」
「それは仕方ないですよ、そこで夜一さん置いていけないですよね」
「あの、紫苑…」
「私なら全然大丈夫ですから、気にしないでくださいね」
ニッコリ笑NAME1##に安心したボクを責めたい
「それじゃあ私仕事に戻りますね!」
「あ、うん」
ゾクッ─
背後に立つ2人の気配を感じて喜助は恐る恐る後ろを振り返った
「な、なんスか?ひよ里サン、琴乃サン…」
「どうでしたぁ?紫苑は?」
物凄く目線が痛い
「全然気にしてないから大丈夫って…」
「もしかしてそれ本気にしてるんか?」
ひよ里の目線もトゲのように痛い
「え、違うんスか?」
「無理してるに決まってるじゃないですか!」
「昨日紫苑がどんだけ喜助のこと考えて…!」
無理してる?そうだ
紫苑は前からそういう子だ
1人で抱え込んで最終的に爆発する
そんなの自分が一番よくわかっていたはずなのに…
「紫苑言ってました…隊長が他の子といるって考えただけで、胸が苦しくなるって」
「それ、ほんとに?」
琴乃は小さく頷く
「他の子とデートしちゃやだ…とも言ってたで」
「やっぱり、紫苑の中ではデートしたことになってるんスかね…」
「でもそれは仕方ないって紫苑はわかってる…だから必死に自分の気持ちを抑えてる…あの泣き虫な紫苑が、涙を流さずに頑張ってる…」
「紫苑が…泣いてない?」
「それがどういう意味かわかるか?」
喜助はひとつの答えに行き当たった
「わかったら早く行って抱き締めてやらんかい」
喜助は走り出していた
どうして会ってすぐこうしてあげなかったんだろう
どうしてゴタゴタと言い訳なんか並べて…
そうだ…さっきの紫苑は全然…
笑ってなんかいなかったのに…