第18章 ボクの前では我慢しないで
落ち着いたのだろうか
遠くに紫苑の姿が見えた
傍に行って、誤解を解かなきゃ…
そう思って走り出そうとしたとき、
平子サン?
平子がうずくまる紫苑の背中をさすっていた
あぁ、そうっスか…平子サンに慰めてもらってたんスね…
喜助の足が止まった
「喜助ェ帰ったんか」
「ひよ里サン、かわりなかったっスか?」
ひよ里を全く見ず感情も何もこもってない言葉を吐く
「紫苑大変やったでー」
「何が?大丈夫でしょ。平子サンがついてるみたいだし」
「何怒っとんや。ハゲは紫苑の二日酔い心配して来ただけやと思うで」
「二日酔い?」
紫苑が?お酒の弱い紫苑が、二日酔いになるまで飲むって…
「真子と酒屋いったら1人で飲んでたんや。大分酔うてたから真子とウチで琴乃の部屋まで送ったんやで」
「珍しいっスね紫苑が1人で…しかもつぶれるまで…またどうして」
「はァ?お前鈍いねんな」
鈍い?ボクが?
これでも一応科学者っスよ
頭はキレるほうだし、回転もそれなりに早いとは思う
「寂しくて眠れなかったみたいですよ」
「琴乃サン」
「喜助喜助ーって大変やったんやで?」
「うそ…」
紫苑がそんな可愛いことを…
「で、夜一さんとは本当に何もなかったんですか?」
「なっ、当たり前じゃないスか!」
「なら早く誤解解いたほうがいいんじゃないですか?」
琴乃が指さすほうには、平子に付き添われて歩いてくる紫苑の姿があった
その顔はどこか辛そうで、顔色も悪かった
「紫苑…」
「さっきはごめんなさい…」
3人は気を利かせてかその場を静かに去る
「誤解なんスよ…夜一サンとは、本当になんにもない」
「…え?なんの話ですか?」
「はい?え?だってさっきの話が聞こえて紫苑逃げたんじゃ…辛そうな顔して、ムリって…」
紫苑はさっき喜助に腕を捕まれたことを思い出した