第18章 ボクの前では我慢しないで
喜助はそのお守りを握りしめ、紫苑を抱き締める
「ちょ、喜助さんっ、みんな見てますっ」
「ありがとう…すぐに帰ってくるからね」
「ん、気をつけて」
紫苑の頭をポンポンと叩き、喜助は現世へと向かった
「浦原隊長ってほんと西園寺さんにベタ惚れだよね」
「素敵なカップルだよね」
「憧れちゃう…」
当の本人はそんなこと、言われてるとは知らずにトボトボと歩き出す
「あ、紫苑ーおつかれ。隊長の見送り間に合った?」
ぎゅ
な、なにこの紫苑
めっちゃ可愛いんだけど!
紫苑は琴乃を見つけるなり、抱きついた
「…紫苑?どうかした?」
「寂しい…」
琴乃は紫苑の気持ちを感じて、頭を優しく撫でた
「そっかぁ、今日お泊まりのはずだったんだね」
「仕事だから仕方ないよね…」
「すぐに帰ってくるよ」
「琴乃、私ね喜助さんと現世に行ってデートするのが夢なんだ」
紫苑が現世にいけないことを知ってるからこそ、その夢に胸が痛んだ
「それまで他の女の子とデートしないって約束したんだけどさ…」
「うん…」
「そんなの多分…無理だよね」
琴乃はかける言葉が思い付かなかった
「今回の討伐隊にだって女の子はいるし、夜一さんだっているし…」
「うん…うん」
「2日通しだから向こうでみんなで寝るのかもしれないし。仕事だからデートじゃないって、いっちゃえばそれまでなんだけど」
「うん…」
「私どんどん汚くなっていく気がする…他の子が喜助さんと一緒にいるって思うだけで…胸が…苦しくなるの…」
涙こそ流さないものの、紫苑の顔は下ばかり向いている
「それだけ隊長を本気で好きだってことじゃない?」
「だけど、こんな汚い私…」
「汚くなんかないよ。隊長を好きだっていう純粋で綺麗な気持ちだよ」
「琴乃が優しい…」
「なっ、私はいつも優しいですー!」
いつもなら絶対泣いてる紫苑が、泣かなくなった
きっと今も頑張って堪えてるんだと思う
強くなろうとしてるんだろうなぁ