第18章 ボクの前では我慢しないで
「しかしもう決定事項じゃからのぉ…」
「…いえ、大丈夫っス」
頼むぞ
その言葉を聞いて喜助は二番隊を後にした
十二番隊までなるべくゆっくり歩く
なんだってこんなタイミングで…
紫苑、怒るかなぁ…
やっと、男に襲われたことも少しずつ考えないようになってきていて、しばらくは何事もなく過ごさせてあげたいと思っていたのに…
はぁ、気が重い…
時間潰しもさすがに限界で隊舎に戻る
「お帰りなさい!喜助さん!」
「ただいま、紫苑」
「なんのお話だったんですか?」
喜助はおもむろに紫苑を抱き締める
「ごめんね、紫苑」
紫苑は理解ができずに頭にハテナが浮かぶ
「どうかしました?」
「現世任務が入って、旅館行けなくなっちゃいました…」
「え?」
「二番隊との合同任務で、日にちずらせなかったんス」
一瞬頭が真っ白になったけど、すぐに現実に引き戻された
「本当にごめんね…」
「仕方ないですよ、お仕事だもん!また違う日に行きましょうね!」
なるべく自然な笑顔を心がけた
なるべく自然に
大丈夫
だって今日決めたばっかりだから、昨日までは決まってすらいなかったんだから…
それか延びただけだと思えばいい
「ごめんね…」
「いいですよ!お土産買ってきてくださいね!」
なんでアナタはそんな何も感じてない風に笑うんスか?
繊細な紫苑のことだ
何も感じてないわけがない
いっそ怒って平手の一発でもくれたら…
紫苑がそんなことしないのは分かってるんスけど…
…─
そして喜助が現世任務に行く日になった
「それじゃひよ里サン、隊のこと任せましたよ」
「任しとき」
喜助は紫苑の姿を探す
「紫苑ならちょっと遅れるけど絶対見送るって言ってたで」
「遅れる?」
そこに小走りで駆けてくる紫苑がいた
「ハァ…ハァ…すみません遅くなって」
「紫苑、大丈夫?」
「はいこれ!」
喜助の手を取り、その上に自分の手を重ねた
「お守り?」
「喜助さんが怪我しないように、無事に帰ってこれるようにって思いながら作りました」