第17章 きすけさん…いるよね?
2人の手が触れる
小さく震える手がまた一瞬ビクッとなる瞬間に
「大丈夫」
後ろで囁いてくれる声があった
平子は手を進めて紫苑の手を握る
なにかが込み上げてくる…
胸が苦しい
呼吸が苦しい
涙がでそうなのを必死に耐える
紫苑の震えはまだ止まらない
「きすけさん…いるよね?」
今にも泣き出しそうな震える声に、喜助はすぐに返事をする
「いるよ、大丈夫」
強くならなきゃ…
紫苑の手の震えが止まった
その様子に安心した平子は少し強く紫苑の手を握る
そしてその手をグッと自分のほうへ引っ張った
「はい、そこまで!」
はずだった…
「な!邪魔すんなや喜助」
「ボクの前で紫苑を抱き締めようなんて愚行にも程があるっスよ」
きゅ
紫苑の小さな手が喜助の袖を掴んでいた
「よしよし、よく頑張ったね」
悔しいけど、なんで喜助なんかちょっとわかったわ…
「ほんなら俺は帰んで」
「あの、ありがとうございました…」
「いつでも協力したるで、なんなら次はキ…」
「お疲れっしたぁ!平子サン」
平子の言葉を途中で遮り、喜助は平子の背中を押して出口へ誘導する
文句を言いながら部屋を出ていった平子を見送ると紫苑の元へ戻ってきた
「紫苑、ごめんね急に」
紫苑はフルフルと首を横に振る
「喜助さんが、居てくれたから…っ」
ついさっきまで我慢していた涙が、緊張の糸が途切れ溢れだしてくる
「また私泣いてっ…ごめっ…なさ、強くなるって…決めたのに…」
喜助は優しく紫苑を抱き締める
「泣いていいんスよ。ボクの前では、頑張らなくていい…」
「なんで…そんなに…っ…優しいんですか…っ」
「紫苑に笑っていて欲しいから…」
「…笑って…」
「紫苑が、隣で笑っていてくれるだけで、心が満たされるんス。幸せを感じる。だから、笑っていて欲しい。ボクの為に…」