第17章 きすけさん…いるよね?
誰にも会いたくない
って四番隊の人に伝えた
1人になっていろいろ考えたい
ううん、ほんとは何も考えたくない
「最近私弱すぎ…」
強くならなきゃ、しっかりしなきゃ…
琴乃だって、私を心配して言ってくれたんだから…
「紫苑、調子どうっスか?」
「喜助さん…うん。大丈夫」
分かりやすい作り笑い
元気のない声
無理もない…か
喜助は紫苑のベッドに腰をおろすと、優しく頭を撫でた
そして包帯の巻かれた手首にそっと手をのせた
「こないだ、話したいことがあるって来てくれたのは、彼のこと?」
「…はい」
「ごめん、あの時話を聞いてあげられていれば」
「いいんです…助けに、来てくれたから」
喜助は紫苑を抱き寄せた
「あの、麻美さんって…」
リョウ先輩の彼女だった人で、喜助さんと関係があった人…としか知らない
「…紫苑には、知られたくないことばかりっスね…」
少しため息を吐いて、紫苑を離した
「彼女と関係を持っていたのは事実っス。でも、恋人が居たことは知らなかった。それに、ボクは来るもの拒まずだったから…その…ね」
もういいでしょ?
言いたくない
察して
という声が喜助さんから聞こえてきそうな、困り顔だった
「だけど…あんまり女の人、弄んじゃ駄目ですよ…」
「…もうしません」
ずっと、どうだって良いと思ってたのに、紫苑に言われた言葉が胸に刺さる
「麻美さん、どこにいっちゃったんですか?」
「…うん。何処かな…」
死亡報告は無い
霊圧も感じない
可能性があるとすれば…
「見つかると、いいですね」
ごめん、紫苑
あの場所のことは、あまり公にできないんス…
確証もない
そして居場所を伝えたところで、彼女に会える可能性は少ない
ボクがあそこに通したのはひよ里サンだけだし、そう何度も部外者が行っていい場所じゃあない
「紫苑?」
握っていた手が震えている
今にも落ちそうな程に溜まった涙
「ごめ…なさ…っ。ちょっと、思い出しちゃって…っ」
「…怖かったね。もう大丈夫だから…」
紫苑を強く、抱き締めた