第16章 喜助さんに…見せないで!
「俺、割りと一途だし、彼女以外に優しくしないよ?西園寺さんのこと、大事にするから。俺と付き合ってよ」
…─
「ふァ…2日徹夜は堪えるっスね…」
研究室から喜助が欠伸をしながら出てくる
まだ始めたばかりだからというのもあるが、試作品すらなかなか上手くいかない
「喜助か、なんや久しぶりやなぁ」
「そっスね、変わりないですか?」
「まァな、ウチのおかげやで」
「ところで紫苑は?」
あの時の様子が気になって、早く会いたい…
「どこやったっけ…えーと……なァ!紫苑今何処に居るか知ってる奴居る?」
大きな声でまわりの隊員に問いかけるひよ里
するとそのうちの1人が立ち上がった
「西園寺さんなら書類配りに十一番隊に行っています」
「やて、喜助」
十一番隊か
それなら近いし、帰りを待ったほうが良いか…?
「え?十一番隊?」
「琴乃、なんやそないに驚いて」
「隊長ちょっと…!」
喜助を部屋の隅に呼び出した琴乃は、最近の紫苑の様子を話し始めた
…─
「俺と付き合ってよ」
断らなきゃ…
今までの私は、せっかく告白してくれた相手を傷つけるのが嫌で、押されるがままに付き合ったこともある
けど、今は…今は…大事な人がいるから…
「ごめ…」
瞬間背中が壁に押し付けられていた
紫苑は何が起こったか理解できないでいる
「リョウ…先輩?」
「忠告したのにさぁ、残念だなぁ」
ニッコリ笑う彼の目が少しも笑ってない
紫苑は初めてそこで恐怖を感じた
逃げよう…っ
ぐっ
壁に縫い付けられていた両手首を掴む彼の手に力が入る
「いっ…!」
「もう一度言うよ?浦原隊長なんかやめて、俺と付き合ってよ」
怖い…いくら手に力を入れても、男の人の力には全然かなわない…
助けて…喜助さん…
「私…リョウ先輩とは付き合えません…喜助さんが好きだから…!」
その言葉を聞いて彼の紫苑を掴む手は更に力を増す
「んッ……!!」
次の瞬間紫苑の唇が奪われた
抵抗して手に力をいれるものの無駄な努力に終わる
「……ん……ハァッ……やめっ!!」