第16章 喜助さんに…見せないで!
「少し落ち着いてるから」
「ありがとうございます」
嬉しそうな顔に、少し安心した
「あの、最近なんですけど…」
「うん」
紫苑は一体何に悩んでいるのか
ボクにしてあげられることが、あれば良いけど…
「最近…」
「局長ー!!浦原局長ー!!大変です!!至急お戻りください!」
「局長ー!!」
自分を呼ぶ声を聞いて葛藤する頭の中
「また、今度でいいです…」
「でも…」
「局長!助けてください!!」
余程緊急の事態なんだろう
さっきまで静かだった局内が、一気にざわつきはじめた
喜助さんの困った顔を、直視できない
「ごめん…紫苑。後で必ず聞くから…!」
喜助さんが戻ったのを確認して、私も技局を後にした
…─
紫苑は大丈夫だろうか…
せっかくボクに会いに来てくれて
話しを聞いてほしいと、初めて言ってくれたのに
それに、泣きそうな顔をしていた
嫌、むしろあれはもう泣いていたんじゃ…
機械の応急処置はしたものの、それ以降何も手につかない
心配だ…
明日にはきっと一段落つくはずだから、紫苑の話を真っ先に聞いてあげよう…
…─
「はぁ…」
なんだか最近ため息ばかりが出てくる
よりによってどうして私が十一番隊に書類届けなきゃ…
憂鬱だ
風強くて歩きづらいし
ささっと済ませて戻ろう
「あ、あの!此方十一番隊への書類です」
一番最初に目に入った隊員に書類を差し出すと
「書類?あぁー…面倒くせぇな。リョウに渡してくれよ」
「そういうの、基本リョウがやってるからよ。確かさっき離れの倉庫に行くって言ってたからよ」
「リョウ知ってるか?」
「…はい」
よりによってなんでリョウ先輩…
重い足取りで離れを目指した
コンコン─
と離れの扉をノックすると、はいと返事がきて扉があいた
「あれ、西園寺さん?」
「あの、書類届けに来たら、リョウ先輩に渡してくれって…。此処に居るからって」
「そうだったんだ。ありがとう。ウチの隊員みんなこういうのやらないからさ、ほとんど俺に回してくるんだよね」
苦笑いしながら書類を受けとると、軽く目を通しはじめた