• テキストサイズ

With me

第16章 喜助さんに…見せないで!



「先輩紫苑のこと狙ってるのかなぁ」

「なんかさ、距離が…近いんだよね」

「隊長に会いにいって、聞いてもらえば?彼女なんだし。隠し事すんなって言われてるんでしょ?」


またこの子は

隊長に迷惑だとか、考えてるんだろうな


少し俯く紫苑を、若干ため息混じりで見る


「ん~、十一番隊に知り合いも居ないしなぁ」


取れた!

と少し嬉しそうに睫毛を見せてくる琴乃

良かったね、と微笑む紫苑


「早く研究終わらないかな…」






…─






もうダメだ

限界


喜助さんに会いたくて

話しを聞いて欲しくて

抱きしめてほしくて

技術開発局まで来てしまった


「はぁ…」


だけど、来たのはいいものの、やっぱり声をかけられなくて、忙しそうにしているのを遠目で見ているだけだった


「紫苑?」


そんな私に声をかけたのは


「阿近…」

「珍しいな、此処に来るの」

「うん。ごめん、気にしないで」


しばらく阿近は黙っていたけど、私の視線の先に気づいたのか「ちょっと待ってろ」と言い残して、奥に進んだ


「待って!阿近!いいから…」


というのも遅く、阿近は目的の人に話しかけた

なんとなく、恥ずかしくなって隠れるように壁の内側に入った

こっちに向かってくる足音が聞こえる

どうしよう

なんか、涙が出そう


「…紫苑?」

「喜助さん…」


少し、疲れた表情

薬品の匂い

だけど、大好きな喜助さんだ


「どうしたんスか?技局に来るなんて珍しいっスね」

「…ごめんなさい、邪魔して」

「ボクに会いたくなっちゃった?」


優しく笑う喜助さんを見て、震える唇を抑えるように噛んだ

コクリと頷く紫苑を抱き寄せる


「ボクも会いたかった」


涙が溢れないように、必死に目に力を入れる

ただでさえ、邪魔してるのに泣いたりしたら、もっと迷惑かけちゃう


「喜助さん、あの…」

「ん?」

「聞いて欲しいことがあって…」


ボクの袖を掴む手に、キュンと心が鳴る


「時間ある時でいいので…」

「いいっスよ。今聞きますよ」

「え?でも…」


ボクを見上げる目が、うるっとしてるのは見間違いなんかではないだろう

/ 761ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp