第16章 喜助さんに…見せないで!
「紫苑のごめんねはもう聞き飽きた!謝るの禁止ね!」
「なっ、なにそれ!?」
「一言ありがとうって言ってくれればいーよ!」
「琴乃…」
琴乃は本当に優しい…
「ありがとう」
「うん!」
琴乃の笑顔が眩しかった…
…─
退院してから数日、喘息症状が出ないか心配だったものの、やはり尸魂界は空気が綺麗なのかなんともなかった
気付いたら周りの木々は紅葉していて、金木犀の匂いが香る
喜助さんは私が退院してから、研究室で私の薬の研究をしてくれているらしい…
だからあんまり会えてはいないけど、私のことを考えてくれていると思うとそんなに寂しくはない
「西園寺さん!」
一緒に歩いてる人たちから離れて近づいててくる人影
「あ、えっと…リョウ先輩!」
「ハハッ、先輩なんて要らないよ」
頭にポンと乗せられる手のひら
「よかった。退院できたんだね」
「知ってたんですか?なんか、恥ずかしいですね…」
「倒れたって聞いて、俺すっげー心配してたんだよ。お見舞い行ったけど、面会謝絶だったし」
「来てくれたんですね。心配してくれてありがとうございます」
その時、ふわっとあの香りを感じた
「あ、あのっ…リョウ先輩!」
「いいじゃん、ちょっとだけ」
「こ、困りますっ」
リョウは紫苑を抱き締めていた
紫苑が踠くも、男の力には簡単に負けてしまう
「自分の身体大事にするんだよ」
「は、はい…あの、そろそろ」
「何かあったら、俺のこと頼ってきて良いからね」
漸く紫苑を解放すると、優しく頭を撫でた
「今度飯でも行こうよ。じゃ、またね」
「あ!先輩…!」
紫苑が断りを入れる前にリョウは立ち去った
どうしよう…
はっきりと断れなかった
それにまた匂い、ついちゃった気がするし…
喜助さん、また怒っちゃうかな…
でも今研究室に籠ってるから…
肩を落としながら隊舎のシャワー室へ向かった
「このシャワーってやつ本当便利…」
これも喜助さんの発明らしい
今は十二番隊にしかないけど、少しずつ他の隊にも設置していく予定らしい