第16章 喜助さんに…見せないで!
「へぇ、平子サンがそんな気の利いたことを…」
「喜助さんと行ってきなって」
「……」
喜助は少し黙りこんでしまって、紫苑は一気に不安になる
「もしかして…嫌ですか?」
「あ、いや…そうじゃなくて…」
喜助はゆっくりと紫苑に目線を合わせる
「紫苑、ボクはね、紫苑のこと大事にしたい」
「はい…」
「正直言うと…情けない話、ここに行って何もしない自信がないんス…」
それって…
「だからよく考えて、それでもいいって言ってくれるなら…その時は一緒にいきましょ」
さっきの不安は要らぬ心配だった
私は喜助さんにこんなにも大事にされて、愛されてるんだ…
この人なら…
立ち上がろうとした喜助の裾を掴む
紫苑は下を向いたまま返事をする
「…いいですよ」
「え?」
「喜助さんなら…」
喜助は目を見開いて下を向いたままの紫苑を見つめる
「本当に?」
紫苑は小さく頷く
「喜助さんのこともっと知りたい…」
喜助はギュッと紫苑を抱き締める
「ボクも、紫苑のこともっと知りたい」
勤務調整しとくね、と喜助は紫苑の頭を優しく撫で、治療室を後にした
…─
「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」
退院した紫苑は十二番隊にいた
「西園寺さん、もう大丈夫なの?」
「はい、先輩、あの時はお世話になりました」
ニコッと笑う紫苑に先輩は思わず赤面する
「ま、まぁ無理しない程度にね」
西園寺さんってあんなに可愛かったっけ…
顔を隠しながら離れていく先輩を、紫苑は不思議そうな顔で見ていた
「紫苑!こっち来て!」
「琴乃!」
琴乃に呼ばれ縁側に行く
「体大丈夫?」
「うん、平気」
それから卯ノ花隊長に言われたことや、その間の隊のこと、平子隊長やひよ里さんのこと…そして喜助さんのことも聞いた
「隊長大変だったんだからね!」
「そんなに?」
「ずーっと隊首室に籠ってさー、生きてるかもわかんなかったよ!」
「色々ごめんね」
琴乃は指で×を作り、頬を膨らます