第16章 喜助さんに…見せないで!
頼めるのは多分、あなただけです
と答えになってない、と思ったのも一瞬で次の言葉にボクは驚いた
「西園寺さんに効く薬を開発してほしいのです」
「…薬?」
「既存の薬はどれもほとんど無意味といって良いでしょう…唯一効果があるのは吸入薬のみです」
「薬なんて…作れるんですか?」
私は十二番隊だけど、技術開発局のことは正直全く分からなかった
「それは局長次第ですね」
卯ノ花はニッコリと喜助に笑いかける
「わかりました。作ります。絶対に」
「お願いしますね」
卯ノ花は頭を下げ、それと…と続けた
「血液検査の結果なのですが、西園寺さん貧血ですね」
「はい…」
「そちらも見たいので、定期的に検査に来てください」
わかりました、と紫苑は胸をきゅっと掴んだ
「そうそう西園寺さん、明日退院していいですよ」
ニッコリ笑って部屋を出ていった
「退院していいって、よかったね」
手をギュッっと握られ少し下から顔を覗かれる
「はい…っ」
「ボクが現世に行けるようにしてあげるから」
「そしたら…」
「ん?」
「私が現世に行けるようになったら…現世で…」
喜助は紫苑が何を言いたいのかわからずにいる
「?」
紫苑の顔が赤くなってる
ボクが握った手の中で拳をギュッと握りしめて
「デートしてくれますか…っ」
思いがけないお願いに少し時間がとまった
「紫苑…」
「喜助さん…」
ギュッと紫苑を抱き締める
「一緒にデートしようね」
喜助さんはよく、耳元で囁いてくる
癖なのか分からないけど、吐息がかかっていつも、凄くドキドキする
「私以外の子とデートしちゃ嫌ですよ…」
キュン─
ちょっと泣きそうなその声はボクの心を震わせた
「しないよ…約束する」
静かな治療室で2人の約束の口付けが交わされる
ゆっくりと唇が離れて余韻に浸る
おでこをくっつけどちらからともなくフフッと笑い合う2人
「あ、そうだ喜助さん」
「ん?」
「前にお菓子のお詫びだって、平子隊長からこれもらったんです」
紫苑は平子にもらった旅館の宿泊券を見せる