第15章 頭が真っ白になった
一瞬空いた戸の向こうには、酸素マスクをつけ多くのチューブを繋がれた紫苑がいた
「隊長、隊舎に戻りましょう…」
動こうとしない私たちを見かねた先輩が声をかける
命は助かった…
でも、もしこのまま目を覚まさなかったら?
「隊長、大丈夫ですか?」
「…すみません、行きます」
「紫苑が目ェ、覚ましたら俺にも伝えるんやで!」
平子も自分の隊舎に戻っていく
隊舎に帰るまでも、隊長は一言も話さなかった
ひよ里さんには私から報告した
隊長はあれからほとんど隊首室に籠っている
毎日四番隊からの連絡を待つ
その間隊はほとんどひよ里さんが仕切っていた
「喜助の様子はどうじゃ?」
「夜一さん!」
琴乃は首を振って隊首室を指す
「大方、自分のことを責めているんじゃろうな…」
「なんて、声かけたらいいか分からなくて…」
「今は何を言っても無駄じゃろ…」
頭を抱え夜一さんは十二番隊を後にした
あれから3日…
毎日四番隊に行っては面会謝絶だと断られた
たまに開く治療室の奥には、あの時と変わらずたくさんの機械が繋がっていた
隊長はまだ、隊首室からでてこない…
…─
あれから何日たっただろうか…
誰もここに来ない…
それもそのはず…自分自身で施錠をした…
幸いにも緊急伝達もない
今は、誰にも会いたくない…
会って話す余裕がない
なにも喉を通らないとはこのことか
不思議と辛くはないし、きっと紫苑はもっともっと苦しかったはず…
気づいていたはずなのに…
紫苑が何か隠してるのに、気づいていたのに
あの時あんな思いをさせたのに
平子サンにもなにも言えなかった
紫苑はボクの中で、大きくなりすぎた…
君がもし目を覚まさなかったら、ボクはどう生きていけばいいかわからないよ…
「隊長!隊長!紫苑が!」
久しぶりに聞く人の声
「目を覚ましたって!」
心臓がバクバクしてる
震える手で施錠を解く
「隊長!行きましょう!紫苑のところに」
「ほんとに…?」
琴乃サンに手を引かれて四番隊に連れていかれた