第15章 頭が真っ白になった
「昨日四番隊で診てもらったんです。ちょっとびっくりしただけだから、薬を飲めば大丈夫だって…」
「じゃあ一体なんで意識を失って!」
付き添いの先輩が声を荒げる
「わかりません…今日だって、咳していたけどちゃんと薬を飲んでたし…」
琴乃の目に再び涙がたまる
「なんで、ボクに話してくれなかったんスか…」
喜助は下を向きながら、悲しみのような怒りのような静かな声で聞く
「そしたら現世任務から外したのに…」
「紫苑は…四番隊の診察は大したことなかったし、席官も目指したいから、できないことを作りたくないって…それに…」
「それに?」
「隊長忙しいから…余計な心配かけたくないって…」
喜助は爪が食い込むくらい拳を握る
「心配ぐらい…させてくださいよ…紫苑が居なくなったら…心配することもできない…っ」
こんなに辛そうに、こんなに怒ってる隊長を見たのは初めてだった…
工藤の事件のときだって、隊長は冷静でその冷静さに私は救われた…
そんな隊長が…こんなに余裕がない
それはきっと、隊長の中で紫苑が大きくなってしまったから…
「ねぇ隊長…紫苑、死なないよね?」
それには先輩が答えてくれた
「今は、祈るしかできない…」
その時駆け足でこちらへ向かってくる者がいた
「紫苑は!?」
「平子隊長…!」
「まだ、治療中です…」
平子は喜助の胸ぐらを掴む
「お前のせいやぞ喜助!紫苑こんな目に合わせおって…なんちゅう顔しとんや!」
喜助はなにも言えずにされるがままだ
「やめてください平子隊長!浦原隊長は悪くないんです!」
「ボクが悪いんスよ…こんなことになるなら、無理やりにでも、話しを聞けばよかった…っ!」
平子は苦い顔をして、喜助を乱暴におろす
「紫苑が死んだら喜助、お前のこと…絶対許さへんからな!」
ガラッ─
治療室の戸が開いて四番隊の隊員がでてくる
「紫苑は!?」
「一命はとりとめました。意識はまだありません。数値が安定するまでは、面会謝絶になります……」
一命はとりとめた……
その一言にその場にいた全員が安堵した