第15章 頭が真っ白になった
治療室の前に来る
手が震えて開けられない
ボク、今どんな顔してる?
どんな顔して会えばいい?
トンと肩に、誰かの手がのる
「まだ治療中ですので、刺激しないようにお願いしますね」
「卯ノ花隊長…」
それだけ言って卯ノ花隊長は去っていった
「隊長!あけますよ!」
その声でガラッ─と戸が開く
夕日が眩しくて、一瞬目を瞑る
いくつか機械が外れて少しすっきりしてるだろうか…
ベッドに横になっている彼女は、ゆっくりとこちらを向く
「琴乃…?」
「紫苑!」
紫苑に飛び付く
目からたくさん涙がこぼれていく
「いつまで寝てるの…っ!バカっ!」
「…ごめんね」
酸素マスクを曇らせながら弱々しく話す紫苑を、それ以上責められなかった…
「こんなことになるなら…みんなの言うこと、もっとちゃんと…聞いておけばよかった…」
話したいことがたくさんあった
けどそれは今は我慢した
「もう1人来てるよ」
「え?」
「隊長」
琴乃は喜助を引っ張って紫苑の横に立たせる
「じゃあ私はみんなに報告してくるからね!」
琴乃が出ていった治療室は静けさが戻っていた
「…喜助さん」
喜助は震える手で紫苑の頭を触る
生きているのを確かめるように頬に触れ、首筋を触り、肩を触り、手を握る
あぁ、紫苑が生きてる…
ちゃんと、暖かい…
「喜助さんのそんな顔、初めて見た…」
「紫苑が悪いんスよ…」
「…心配かけてごめんなさい」
「も、謝らなくていいから…どんなことでも許してあげるから…どんな紫苑でもいいから…」
本当はなんで話さなかったのか問い詰めようと思っていた
命に関わるようなことを黙っていた彼女を憎んだ
怒って怒って怒れば…スッキリするんじゃないかって
でも彼女の、紫苑の姿を見て全部ふっとんだ
「紫苑…」
喜助は紫苑の手をギュッと握る
「生きていてくれてありがとう…」
紫苑もその手を握り返し、涙が伝った