第1章 この子どこかで…
「あの、紫苑サン…」
「なんでしょう?」
「ボク、紫苑サンに前に、何処かで会ったような気がするんスけど…」
紫苑は少し考え込んで
「…初めまして…だと思いますけど」
と返した
キョトンとした顔の紫苑に、喜助は心の中でため息を吐いた
「ボクの思い違いかもしれませんね」
「すみません」
「いえ。それより…」
喜助は紫苑の斬魄刀に目を向けた
「紫苑サンの刀は、浅打じゃないんスよね」
紫苑は自分の斬魄刀を手に取った
不思議に思うのも無理はない
本来は皆浅打から鍛練するものを、紫苑は最初から斬魄刀を持っていた
「これは元々私のお母様が持っていたもので、霊術院に入学が決まった時に受け継いだんです…」
そういえばさっきから斬魄刀に落ち着きがない
紫苑にしか分からないくらいの、小刻みに小さな震えがある
「名を雪姫といいます」
その時喜助の斬魄刀がキィィンと音をだし、紫苑にも分かるくらい大きく揺れた
喜助はそれをおさえるように斬魄刀を手で包む
「スミマセン、気にしないでください」
紫苑の雪姫もさっきよりもカタカタと音をならしている
「よければ触らせてもらえますか?」
紫苑は返事に困っている
「あの…やめた方がいいと思います。雪姫は私以外が触ろうとすると攻撃してしまうんです…琴乃は大丈夫なんですけど」
「そうなんスか?」
その時、扉が勢いよく開いて琴乃が迎えにきた
「紫苑!」
「琴乃」
「あ、浦原隊長!来てくれたんですね。紫苑がお世話になりました」
喜助は小さく首を横にふる
「卒業したら、ぜひ十二番隊へ来てくださいね」
2人は喜助に再度お礼を言い、四番隊にお礼を言い退院した
「なんの話してたの?」
「ん?斬魄刀が浅打じゃないんだねって話」
「雪姫のことかぁ。昔は呪われた斬魄刀って言われてたんだっけ」
「うん、触ろうとするとみんなケガしちゃうの」
紫苑は腰の雪姫に手を置く
「私は大丈夫だったけどねー」
「不思議だよね」