第14章 珍しいっスね、喧嘩なんて
執務室に戻ると琴乃と目が合う
少し気まずそうに下を向く
「紫苑、おつかれっ」
「…おつかれ、さっきはごめん…」
「え、じゃあ!」
紫苑は琴乃から目線を外す
「それはしない…」
「紫苑…」
「喜助さんたちに言わないでね」
そう言って執務室をでていく紫苑を琴乃は静かに見つめていた
…─
次の日からは何事もなかったかのように紫苑と琴乃は話していた
琴乃のこういうところが私は好き
「なんや、仲直りしたんかあの2人」
「さぁどうでしょう」
いつものように話す2人にひよ里は安心する
「そういえばひよ里サン、昨日何か言おうとしてませんでした?」
「ん?あぁ、紫苑ちょっと咳しとったから風邪引いたんか?って…でも大丈夫そうやな」
「咳…?」
「ウチの気にしすぎやったんかもな」
紫苑は以前、虐められていたことを誰にも言わずに1人で抱え込んで心に傷を負った
そんな思いはもう二度とさせたくない
お願いだから…周りを頼って…
紫苑にはたくさんの仲間がいる
それに気づいてほしい
…─
2回目の現世任務は琴乃と2人だった
怪しい動きをする虚がいるから、現世にて待機せよとの指示
「ぜーんぜんでてこないね」
屋根の上に座り込み頬杖をつく琴乃
「気抜いた時にでてくるからね」
「はいはーい」
待つこと約3時間
「私眠くなってきちゃった~」
ふぁ、と欠伸をしてついに寝転がる琴乃を横目で見る
「やめてよこっちまで眠くなる…ケホッ」
「紫苑!?」
琴乃は飛び起きた
「平気…」
その時
ギャオオオゥ!!!!
虚の雄叫びが聞こえる
「行くよ!」
長年一緒にいるからかお互いの動きが手に取るようにわかる
何度か探りを入れる攻撃をしたものの、最後は呆気なく終わった
「大したことなかったね」
「そうね…ゴホッゴホッ…ケホッ」
「紫苑!」
苦しそうに胸をおさえる紫苑の背中をさする