第14章 珍しいっスね、喧嘩なんて
「すみません…」
「どないしたんや?任務も問題なかったし…」
琴乃は下を向いて悲しそうな顔をしている
「…私からは言えないです」
「優しいんスね、琴乃サンは」
フルフルと琴乃は首を横に振る
「優しくなんかないです…」
「ボクから紫苑に聞いてみますね」
「話してくれないと、思います…」
「なんやそれ、めっちゃ気になるやんけ」
まぁとりあえず仕事に戻ろうや、というひよ里の言葉でその場は解散した
…─
紫苑は書類を配りに五番隊に来ていた
「琴乃と喧嘩したんやってェ?」
「情報早いですね」
「俺でよかったら話聞いたるで?」
紫苑は平子に判を押してもらうのを待つ
「くだらない喧嘩ですよ、ご心配なく」
「ふーん……ま、仲良ォしぃや」
紫苑に判を押した書類を渡すと、紫苑は一礼して五番隊をあとにした
「ただいま戻りました」
「おつかれっス」
隊首室に平子隊長に貰った書類を届けに行く
「先程は失礼しました…」
「別に気にしてないっスよ」
すると喜助が紫苑を手招きする
紫苑は不思議そうに近づくと、喜助は両手を広げる
「おいで」
ドキッと紫苑は戸惑いながらも、喜助の胸に静かに飛び込む
ギュウっと包んでくれるその温もりに安心する
「琴乃サン心配してたよ」
「…ごめんなさい」
唇に力を入れているのが伝わってくる
「1人で抱え込まないで、もっとボクを、みんなを頼っていいんスからね」
「……っ」
こんな嬉しい言葉を言ってくれるのに、私は何も返事できないでいる
そんな自分がたまらなく嫌いだ
「話したくなったら、話してね」
もう一度ギュウっと抱き締めると、喜助は紫苑を解放した
「ありがとうございます」
不器用に笑う紫苑を優しい笑顔で見送った
「ちょっと心配っスね…」