第14章 珍しいっスね、喧嘩なんて
「すみません、遅くなりました!」
紫苑が隊首室に入ると、琴乃が軽く睨みをきかせてきた
「遅いよ紫苑」
「ごめん、ちょっと…」
2人揃って隊首室に呼ばれていた
時間ギリギリになってしまった
「で、隊長。話しって何ですか?」
「現世任務についてなんスけど…」
「現世任務?」
「そっス。そろそろ2人とも経験積んでもいい時期っスから」
死神が現世に行く任務は駐在任務と、駐在で対処しきれない虚や、突発的な虚の発生などの救援に行く任務、調査目的の任務などがある
「程度にもよるんスけど、次機会があったら行ってもらおうと思って…初回は先輩もつけるんで安心してください」
「「わかりました」」
「慣れてきたら駐在もお願いするようになると思うんスけど…」
「「よろしくお願いします」」
隊首室をでようとした時、喜助が紫苑を呼び止めた
「紫苑、ちょっと」
「は、はい」
「隊長に怒られるんじゃないの?変な匂いついてるし」
コソッと耳打ちをして、ニヤッと笑う琴乃は、外で待ってるね。と先に部屋を出た
匂いってもしかして…
「なんで遅れたんスか」
「えっと…」
紫苑の身体の上からしたまで、匂いを嗅いでまわる
「…男と一緒に居たんスか」
「あの…」
「かなり密着しないと、こんなに匂いってつかないと思うんスけど」
怒ってる
凄く怒ってる…
「浮気…?」
「違っ…!」
勢い良く否定して、急に落ち込んだ
そりゃあ浮気と思われても仕方ないような状況だけど、それでも喜助さんに、少しでもそう思われたのがショックだった
「髪が…」
「髪?」
「引っ掛かってしまって…男の人のチェーンのやつに…それを取ってもらうのに時間がかかってしまって」
「……」
「ごめんなさい…」
確かに良く見れば、髪の毛の先が少しチリチリっとしている
悲しそうな表情の紫苑に、心が少し痛んだ
「怒ってごめん…」
ちょっと待ってて、と喜助は棚からスプレーを持ってきては紫苑にかけはじめた
「喜助さん?」
「消臭剤」
「あ、ありがとうございます」
「歩く時はちゃんと前を見て、気を付けるんスよ?」