第7章 思い出の日曜日
実家で過ごす時間はあっという間に過ぎ、帰路に着かねばならない時間になる。
元々余裕はない急な帰省であったし仕方ないのだが、名残惜しいような イルミの事ではボロが出ずに済んでホッとするようなそんな気分であった。
お土産に、と母は こっちが持ってきた菓子折ひとつの何倍にもなるであろう 紙袋に入った食料やらを渡してきた。それに対し美結は若干の苦笑いを浮かべ、荷物になるし賞味期限の早い物以外は郵送にしてとお願いした。
イルミと2人、実家を慌ただしく出た。
◆
ローカル線に乗り込むと一気に気が緩む、美結は大きく息をついた。
「はぁぁ…変に緊張したしなんか疲れた…」
「始終緊張してたよね。自分の実家なのに」
「だってボロが出ないかヒヤヒヤして…とにかくわちゃわちゃだったから余計な心配だったけど。なんかうるさくてごめんね」
「一般家庭ってあんな感じなのかなって体験にはなった」
家庭の空気感はその家様々だが美結の家は賑やかな方ではあると思う。それを一般的と思ってもらえるならば結果は悪くはなかったのだろう。
スマホで時間を見ればすでに16時前。美結は窓の外の緑に目を向けながらイルミに話し掛けた。
「ねぇ、折角来たしどっか観光する?長居は出来ないけど1箇所くらいなら行けなくもないよ」
移動距離を考慮すれば物理的な事情も入るが 有名所は原爆ドームか宮島か。世界遺産に登録される価値ある建造物はどうかと勧めてみる。
「他にも観光名所はいくつかあるよ、ルート的に1番効率的な場所にするなら
「別にいい」
「え、」
「この国の歴史や風景に興味があるわけじゃないから」
「……そう」
「ミユが行きたいなら付き合うよ」
「私は別に…何度も行ったことあるし…」
イルミは時々意味深に言葉を提示する。
きっと本人からすれば至って本心であろうが 聞き手としては深読みをしたくなってしまうではないか。
隣に座る電車の中、伺うようにイルミを見れば イルミもまたじっと美結を見下ろしていた。