第11章 ◉番外 St Valentine Day
こうしてみれば恋愛なんて好きになった方の負け。イルミはきっと、今この瞬間にも美結に会いたいなんて思ってすらいないだろう。これでは美結の方が完全敗者ではないか。
「…………なんていうか、したたかなの。天然なのかわざとなのか知らないけど 油断させておいて真顔で急所ついてくるみたいな」
「それでヤリ逃げされちゃったのかー」
「…………違うよ!いや違くないけど。だって一週間だよ?たったの一週間しか一緒に過ごせる時間ないのに好きになっちゃったんだもん……悔いだけは残したくなかったんだもん……!!!」
声を大にし反論した所で、切なさは募るばかりだ。
「まあまあ、今度また美結のために合コン組んであげるから元気出してよ」
「もういいコンパは。品質保証のときめきを確約出来る場を提供して」
「何その無理難題!雪に埋れて頭冷やしてきな」
「……ぴえんっ」
「残念でしたー私はオンナにつきぶりっ子作戦では落ちません〜」
「……ぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんぴえんっ!」
「うっさい!」
例えば。
イルミの世界にもバレンタインはあるのだろうか、チョコレートは好きなのか。
もらったら嬉しいのか、どういう反応をするのか。
ぐちゃぐちゃになったチョコレートケーキを見たら気の利いたツッコミを入れてくれるだろうか。
なによりも。
こんなに寒いホワイトバレンタインの夜には、チョコレートに負けないくらい甘い時間を約束して欲しいと思う。
予想してみたところでさっぱり答えがわからなくて、胸がちくりと痛かった。
fin