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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第7章 思い出の日曜日


これはイルミなりの気遣いなのか。ついなんとも言えない気持ちなる。にわかに感傷的な気分は 弟のからかう声に簡単にかき消されてしまった。

「お好み焼き作ってあげたって、ソレやっぱり姉ちゃんの彼氏なん

「もう!違うってば颯太は!!」

「何照れてるん。キモい」

「うるさいっ!!」

キッチンからは母の伸びやかな声がする。

「美結ー 颯太も、手伝って~」

「えー…私長旅で疲れてるんじゃけどー」

「いいからキャベツくらい切りんさいよ」

「……あ、キャベツ切るのならイルミが結構うまいよ」

「あらホント?」

「うん。ちょっと驚くレベル」

「それは頼もしいけ イル君手伝ってくれる〜?」

「待ておかん 客にやらす気かい…」

母はキッチンからひょこりと顔を出してくる。外見も含め年齢不詳の美魔女である母は美結から見ても 本当に自分によく似ていると思う。
ただこの母は、全て天然物でそれをやっているから達が悪い。


部屋に香ばしいいい香りが立ち込める頃、自室にいた美結の祖母がタイミングよく顔を出した。

「おやぁ美結ちゃん、帰っとったんけぇ」

「ばあちゃん!元気そうじゃね!」

「元気元気 美結ちゃんの顔見たらますます元気じゃけん」

シワは増えた気がするがにこやかな祖母の顔を見れば 美結も自然と笑顔になる。祖母は美結の隣のイルミに目を向ける。

「こりゃお客様 どちらさん?」

「美結のお友達のイル君。韓流スターみたいじゃろ?」

「まぁまぁこんな田舎までわざわざよう来たの。ありがとねえ」

膝をおり挨拶をする美結の祖母、イルミも小さく会釈を返す。

「お人形みたいに別嬪さんじゃねぇ どれサインでももらっとくか」

「確かそこの棚の中にパパが豊橋でもらってきた色紙が1枚あったけぇ」

「ちょっと!!母さんもばあちゃんもやめてよ!恥ずかしい!」

声を荒げる美結の横で、イルミが そういえば と当然のように話し出す。

「顔写真撮りたがる奴はたまにいるけどサイン求められたのは初めてだな」

「イルミもいいから!話に乗らなくて」

「本当の事だけど」

「……芸能人じゃないんだから」

こうして賑やかな昼食は過ぎて行った。


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