第7章 思い出の日曜日
弟が軽い笑みを浮かべて答えを返す。
「俺の彼女。ミスキャンパス候補でめっちゃ可愛い!」
「颯太は相変わらず面食いじゃな…てかアンタの彼女マリちゃんじゃなかった?」
「それは前の前の彼女」
人の事は言えないがこの弟も大概異性交遊が好きなタイプだと思う。好き嫌いは分かれるであろうが 中世的な顔付きをしている颯太は一部の女子には人気がある。
弟は美結と違い 時折付き合っている彼女を家に連れてくるのだが、父親の事を差し引いても 美結からするとよくそんな気恥ずかしい事が平気で出来るものだと言ってやりたい心持ちであった。
美結は居間のテーブルに頬杖をつき 颯太に言う。
「ゆとり世代のやることはわからんけぇ…」
「ゆとり世代って?」
隣で聞いてくるイルミに、ここぞとばかりに弟を指差して言ってやった。
「こういう超~〜呑気な子の事」
「どういう意味じゃし!」
「ミユもそんなには変わらなく見えるけど」
はっきりそう言うイルミに対し、母はイル君の言う通りだと後押しをする。
世代が関係ないならば家庭環境のせいだろう、そう育てたのは自分ではないか。小さな溜息の後 度々母に心でツッコミを入れた。
少し話した後、昼食の話になる。
何がいいかという母からの問いに イルミは「お好み焼き」と答えを返した。
その返答には心がほんわか暖まる。
地元名物をリクエストされて嬉しくない訳がないし、2人で作って食べた数日前が頭の中に蘇った。
「よし!河合家スペシャルを用意するけぇ」
「おかん この前みたく残り物のヒジキとか入れるんはやめてな」
「身体にええんじゃよ ヒジキは」
「そういう問題じゃないんじゃ」
母はキッチンに姿を消す。それを見送ってから 美結は隣に座るイルミを上目遣いに見た。
「……イルミ好きになったの?お好み焼き」
「母親が作るのはミユが作ったのより美味しいって言ってたから」
「あ、もしかして食べ比べするつもり?悔しいけど母さんのにはさすがにまだ勝てないかも…」
「てゆーか親と離れて暮らしてるとミユも普段は食べる機会ないだろうし」
「え…」
「折角だし食べておいたら?」