第7章 思い出の日曜日
「あ、えっとね…こちらはイルミさん…イルミ=ゾ……なんだっけ、まあいいや…えっと、とにかくイルミさん。私の友達」
「初めまして。可愛いお名前じゃね~ 外国人さんなんね?」
「それよか おかん…可愛いって、いきなりなんか失礼じゃろ…」
「あら、颯太のお名前も可愛いんよ?」
「そこ聞いてないけぇ!!」
母の天然ぶりは相変わらずだ、思春期にはさぞや苛々させられた事もある。今はこの独自のペースがある意味助かるのかそうでないのか、母はころりと楽しそうな顔をしながら 勝手に話を進めてゆく。
「あ、わかったわ!イルミさんは韓国のご出身?」
「母さん……なんで韓国ピンポイントなん……」
「だってお名前も見た目も韓流ぽくて。映画に出とっても全然違和感ないけぇね」
「え、イルミが?…そうかぁ?…てか、韓流って…」
韓流スターと言えば王道美形が多いイメージだ、怪訝な顔をしてついイルミをちらりと見る。いよいよイルミも会話に参戦してくる。
「ミユ 何?そのハンリュウって?」
「んーと…外国の映画とかドラマのジャンルって言ったらいいのかな…あ!そういえば昨日の映画はちょうど韓国映画だ!」
美結の言葉に弟はすぐに反応する、探ぐるような目を向けてくる。
「夜やってたロードショー?……一緒に見たって事はやっぱり姉ちゃんのかれ
「颯太はすぐそういう方向に反応しない!映画くらい1人でもDVD借りてでもどこでも観れるじゃろ!」
誤魔化すように早口で言う。母は相変わらずのニコニコ顔だ。
「美結に韓国籍のお友達がいたとは知らなかったけぇ。実は今おばあちゃんと韓流にハマっちゃってて!小島さんからDVD借りたらそれがまぁ面白くて」
「てか誰じゃし小島さん…まず母さん今頃韓流にハマるってブーム遅れすぎじゃろ…」
「ねぇイルミさん、韓国ってどんな所?ヨン様に会ったことあるん?」
「出身国はカンコクじゃなくてパドキアって所」
「あらぁ 失礼しちゃったけ ごめんなさいね。…パドキアって颯太知っとる?どこかねぇ中東?」
「ヨーロッパの下の方じゃないんか?」
「…………」
そういえば。以前イルミは美結を呑気だと言ったが、それはきっとこの家に育ったせいではなかろうか。
ヒヤヒヤしながら会話を聞いていた。