第7章 思い出の日曜日
とは言っても美結の実家は田舎の方。
広島駅からも電車を2つ乗り継いだ。無事に実家の前に立つ頃には昼時が過ぎる時間になっていた。
「ついに来ちゃった…」
「想像よりも小さいね 家」
「えっ そう?田舎だし土地だけはあるから広い方だと思うけど…」
返事は返すがイルミの指摘は殆ど耳に入らない。
少しの緊張感を持って 美結は実家のインターホンを押した。すぐにそれに応じたのは弟だった。
『はい どちら様?』
「私 美結。帰ったよー」
『えっ 姉ちゃん?!』
驚きの声のすぐ後に弟は家の引戸をガラリと開けた。
今年4月から地元の大学に入学した弟の颯太。
6つ歳が離れているせいか 昔は喧嘩も時々あったが比較的姉弟仲は良い。美結によく似た 男にしては甘い顔付きは相変わらずだったが、最後の記憶では黒かった髪が今では明るい色をしていて、背も幾分か大きくなったような気がした。
「颯太!なんじゃねその髪、粋がっちゃって…あっ 母さんおる?」
「うっさいわ!イキナリ何しに帰ってきたん」
「何しにって訳でもないんじゃけど…母さんに顔見せろとも言われとったし ちょっと寄っただけ…」
あからさまに、颯太の目線が美結の後ろに立つイルミに固定される。美結は早速言い訳を準備した。
「姉ちゃん…え?かっ、彼氏?」
「違うよ!!えっと、友達!てか何噛んどるの恥ずかしい」
「姉ちゃんが家に男連れてくるのなんて初めてじゃし…」
「母さんには友達も一緒だよってさっきちゃんと連絡したけぇ」
「…姉ちゃんが帰るって事すら俺聞いとらんよ。おかんついにボケたんかな」
「…母さんがボケとるのはいつもの事じゃけど…」
玄関先で話していると美結の母が顔を出す。久々に見る母は 丸目をくるりと動かし驚いた顔をして、美結に話し掛けた。
「あらちょっと 美結やだぁ、ほんまに帰ってきたの?」
「そうメールしたよの、さっき」
「ほんまに帰るとは書いてなかったんよ」
「帰るってゆぅたら帰るじゃろ普通!」
声を大きくする美結を他所に、母はイルミへも笑顔での配慮を見せる。美結は少しぎこちなくイルミを紹介した。