第7章 思い出の日曜日
日曜日。
目を覚ますと目慣れた寝室の天井が視界に入る。遮光カーテンから入る光はまだ柔らかくそれなりに早起きをしたようだった。
昨日は一日中寝ていたし、夜もふて寝に近い形で薬を飲んでしっかり休息をした。頭も身体もスッキリしているし風邪はすっかり治っているのが感覚でわかった。
寝室のカーテンを開け、窓を開けてみる。
降り続いた雨の名残として 独特の湿度の高さはあるが 雲も殆どない晴天だった。久しぶりにこのような気持ちの良い空を見上げたような気がした。
「ん~いい天気~…」
美結は大きく伸びをする。頭の中にドキドキしたり、切なくなったりした昨晩を思い出した。
いよいよ最後の1日だ。
眩しい程の天候のせいか 互いにとって今日はいい思い出を残す事が出来ればと前向きに考える事が出来た。ドレッサーの鏡に顔を映し ゆるい寝癖のついた髪を手櫛で軽く整える。たくさん眠ったおかげか 顔色も明るく目元もぱっちり開いている。飾られる家族写真に優しい笑顔を向けた。
「イルミおはよー 今何時?」
「6時半」
「わっ日曜日なのに超早起き!」
天気もいいし気分も晴れやか。昨晩少し悶々としながらも大人しく眠ったのは正解だったと都合よく思えた。
「治ったみたいだね。風邪」
「うん。…なんだかんだ色々ありがとね」
「じゃあ看病代金1万ジェニー」
「ジェニー知らないし1万て高くない?」
「格安だと思うけど」
イルミは至って真面目な顔で言うがこれは冗談、その辺の空気は読めてくる。
にっこり笑顔を見せた後、キッチンに向う。同時にパチリとテレビをつける音が背中に聞こえた。
無洗米を2合炊飯器にセットし、早炊きボタンを押す。30分もあれば炊きあがる、その間に支度をすれば効率もいい。再びリビングに戻ると イルミは子供向けの言葉遊び番組を見ているようだった。
「……何見てるの?」
「このレベルならこの世界の文字も何となくわかるなと思って」
「平仮名ね、学校でもまずは平仮名から習うんだよ。次にカタカナ、漢字、あとは英語かな?」
「そんなにあって全て覚えるのは非合理的な気がするけど。1種類あれば事足りない?」
何やら文句を言うイルミと画面の間を遮るように割って入る。美結はにっこり笑顔を浮かべた。
「行こうか 広島」