第6章 風邪をひいた土曜日
「だ、大丈夫、だよ?」
「また明日寝込むよ。弱いんだから」
「でも……っ」
熱がぶり返したからとはいえ 心身ともに中途半端甚だしいこの状況ではあっさり引き下がれないではないか。必死にどう言いくるめるかを考えた。
だが、その考えも虚しく 乱れた胸元のファスナーを素早く上げられると あっという間に身体を起こされ 寝室まで腕を引かれる。
そして容易く押し倒されるように 熱のこもる身体をベッドに押し付けられた。
「大人しく寝なよ」
「えっ……」
「あ、薬だっけ。薬飲んで寝な」
「う、うん…薬は…飲むけど…」
すぐにその場を離れようとするイルミに目尻を下げた縋る目を向ける。
イルミはなおも日頃と変わらぬ無表情を貫いたまま、これではクールなポーカーフェイサーを通り越しただの冷血漢なんじゃないかと思う程だ。
「なに。その顔」
「え……?」
「体調管理も出来ないくせに。ヤることだけは一丁前なワケ?」
「…………」
先程までの雰囲気はどこへ消えたのか。病人相手にそこまではっきり身も蓋もないことを言わなくてもいいではないか。
あれ以上は求めることを止め手を出さないのは優しさともとれるが、言葉に気遣いがなさすぎるのは相変わらずみたいだ。
こちらから頭を下げ「なんとかこのまま抱いて欲しい」と懇願する方が虚しくもなってくる。
一気に胸の内は複雑になる、素直に口を尖らせた。
「病人の看病なんて好んでやりたいわけないしね」
捨て台詞同然にそう言い、イルミは一旦寝室を出る。
すぐに持ってこられたミネラルウォーターで 絨毯の上に転がったままの風邪薬を口の中に流し込み、拗ねるように布団にすっぽり潜った。
「…イルミって意地悪だよね…」
「別にそんなつもりはないけど」
「自覚してない所が達が悪い」