第6章 風邪をひいた土曜日
イルミとこうしてキスをするのは何度目かになる。
少し深さのある触れ合いも経験済みではあるが、いざこの行為の最終ゴールが見えると堪らなく胸が熱くなってくる。
第一に、実りのないその場しのぎの恋愛に神経を使いあれこれ考えるのは馬鹿らしい。いつの間にか芽生えた中途半端な感情を満たすには、身体を重ねた方が早く効率がいい。
1番怖いのは 身体よりも心が繋がる事だろう、離れた後の喪失感や虚無感は嫌でも想像がつく。
もう一切 余計な事を考えないようにただひたすらイルミに応える。吐息や身体がイルミを感じて反応する、その感覚だけを信じて 思考も丸ごと乱してしまえばいい。
「…っん…」
いつの間にか パジャマ代わりにしているの薄いパーカーのファスナーを半分程下ろされ、 侵入する手によって下着の肩紐を易々と下ろされている。胸を包むイルミの手は 時折意地悪に敏感な部分を掠めながら、甘い刺激を与えてくる。
首筋をくすぶっていた唇がそこに寄せられ 先端をやんわり舐められた。
「…っ…あ、…ぁ」
おかしい程に荒い呼吸が止まらない。
イルミの刺激に集中する傍ら、途中で止まっていた服のファスナーが下まで下りる音がした。
時間制限のある関係だからこその興奮はあるかもしれないが、それを差し引いても信じられない程 心臓がドクドクする。顔が火照るし頭が変になりそうだ。
まるでこういった事情が初めてかのように、余裕がなかった。
ふと愛撫が止んだ。
切なげに乱れた顔を少し下に向ければ、すぐにイルミと目が合った。
「顔が赤いよ」
「……え」
「真っ赤」
「そ、それは…だって。こんな事、してたら…」
イルミの手が頬に伸びる。
その動作に何となく過ぎった嫌な予感、それは見事に的中した。
「熱い。また熱がある」
「嘘……っ」
この異常なまでに動悸する感覚は熱のせいだったのかと妙に納得をした。
すぐに胸元から手を引っ込めるイルミに少し焦った顔を向けた。