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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第6章 風邪をひいた土曜日


風呂上りに美結はリビングにひょこんと顔を出す。
濡れ髪を片側に集めフェイスタオルでとんとん水分をとりながらイルミにねだる声を出した。

「ねぇイルミー髪の毛乾かして?」

「なんで?オレが?」

「うん。お願い」

笑顔でそう言い 洗面所に手招きをする。風邪を引いたのをいい事に甘えられる所はとことん甘えたくなってくる。
イルミは呆れた様子で小さく息をつきつつも洗面所に顔を出してきた。


鏡の前に2人で立った。
ヒールも履いていない素足のままでは歴然、こうして並んだ所を客観的に見るのは初めてだが 想像以上に身長差があり ますますイルミが頼もしく見えた。
イルミと洗面所の鏡越しに目を合わせ、高かったマイナスイオンが完備されたドライヤーを手渡した。

「適当でいいから。ね? お願い」

「どのみち適当にしか出来ないよ」

ドライヤー特有の豪快な風音の元、イルミは大きな手で美結の髪をわさわさ揺らし無造作にドライヤーを当てる。
慣れないのか得意ではないのか 単に面倒なだけなのか、煩雑に見える扱いににわかに笑みがこぼれた。

髪の毛がやや乾いてきた頃、上からイルミの声が落ちてくる。

「染めてるんだね。髪」

「ん?うん 少し根元伸びてきてるでしょ、また美容院いかなきゃなぁ」

イルミの指摘通り、髪は雰囲気を軽くする程度に自然な茶色に染めている。イルミとの身長差も髪色のコントラストも、バランス的にお似合いなカップルなんじゃないかなんて 勝手に思ってみる。鏡の中のイルミの黒髪に目を向けた。

「私も元は黒髪なの。だからイルミと一緒だよ」

「なんでわざわざ染めてるの?」

「ん〜 黒だと子供っぽく見えるし。下手すると田舎の中学生!」

「髪の色は関係ないと思うけど」

「何が言いたいの?」

「内面が問題なんじゃないのって事」

「もぉー はっきり言うよねー」

鏡の中のイルミを見ればいたって普段通りの無表情。それも見慣れた、美結はイルミの分までにっこり笑顔を向けた。


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