第6章 風邪をひいた土曜日
目を覚ます。
またもいつの間にか眠っていたらしい。目覚めた頃には あたりは真っ暗になり、イルミの姿もなかった。美結は布団から身体を起こした。
たくさん眠りたっぷり汗をかいたおかげか 頭は随分スッキリし、目元もパチリと軽かった。そのままリビングへ顔を出せば イルミが検温にやってくる。
「だいぶ顔色良くなったね」
「…うん!イルミのおかげだよ。ありがとう」
「特になにもしてないよ」
「アイスや薬くれたりね。何より側にいてくれたの嬉しかったんだ……ちょっと心細くなってたから」
「身体も弱いけど、メンタルも弱いの?」
「今はイルミがいるから大丈夫。」
額に触れてくるイルミを下から見つめた。イルミはいざという時にこうしてものすごく頼もしい。
「いてくれて、ありがとう」本心でそう思えた。本日何度目かになる体温チェックの後、イルミは熱が引いたとはっきり告げた。
美結は大きく伸びをする。リビングの時計を見ればすでに20時前だった。
これはさすがに寝すぎではと驚き 折角の休日を台無しにしてしまった事をイルミに素直に謝罪した。
嫌味の一つでも返ってくるかと思ったら 「休める時にはしっかり休んでおくべきだ」と気遣いある言葉が返って来た。
優しいのか厳しいのか、イルミはよくわからない時がある。
短い共同生活の中で彼についてわかった事もたくさんある。それと同時にまだまだ知らない事も山ほどあるのだと思うと 美結の顔に寂しそうな笑顔が浮かぶ。
今日一日を体調不良で寝込んでしまったので 一緒に過ごせるのはあと一日。こうしてみると一週間とは驚く程にあっという間に感じられる。
心の中でカウントダウンが始まった気がした。