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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第1章 あなたと出会った月曜日


「私もう寝る。約束だから絶対こっちに来ないでよ」

「わかってる。護衛を雇ったと思えばいいよ」

「………」

護衛って。
ハリウッドセレブやお嬢様気分に浸れる訳もなく。
確かにこの男、日本人平均より体格はいいが 護衛と言うには雰囲気がどこか貧相だ。顔色だって何と言うか青白い気もする。
強そうと言うよりは不健康にも見える。先月消防士との飲み会があったが 彼らの方が余程頼りになりそうではないか。
それでも当の本人は至って真面目顔だった。

「護衛って意味わからないの?」

「…わかるよそれくらい。とりあえず守るんでしょ?ありとあらゆるこの世の悪から」

「変な奴来たら対処するから。と言ってもこの部屋金目の物なさそうだし来ない気がするけど」

「…可愛い女のコが住んでるから来るかもしれないよ。ストーカーとか変態とか…異国から来た不審者とかね…」

最後の一言を強調したつもりだったがイルミは全く怯まない。

「あ、そういう方向ね。でも暮らしのクオリティから言ってミユは普通の民間人だろ。心配のし過ぎは気に病むからオススメしないよ」

「…別に気に病んでるワケじゃ…」

「オレのいる間は安心して過ごしていいよ」

「…………」


安心出来ない理由はあなたの存在なのだが。何故か伝わらないようだ。

もういいと、美結は寝室のドアを締め そのままベッドへダイブし 一連の会話を反芻した。

敵と闘うだの殺すだの、会話の節々に見える一般的には使わない言葉が気になった。ああいうタイプは警察や友人に助けを求めたりと刺激をすると 激情し衝動的に襲い掛かってきて殺されかねないのではとマイナスの想像力ばかりが働く。

手の中でプルプル音を出すスマホを無視し 美結は何度も寝返りをする。普段であればキープ男から流れてくるLINEに返答したり 構ってくれそうな相手や友人と電話をしたりする所だが今日は当然それどころではない。

少しも眠気を感じない中、いつでも警察を呼べるよう110をスマホに写し ビクビクしながら画面と睨めっこをするハメになった。
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