第1章 あなたと出会った月曜日
「もしかして………無一文だけどここに居座りますって事?」
「そうなるね。それも気が引けるしオレに出来る事があればやってあげてもいいけど」
「……何が出来るの」
「殺して欲しい人間がいれば確実に始末してあげる」
「…………………」
「特別サービス100%割引」
いい大人が中二病か 偉そうに何を言っている。
一瞬喉元まで言葉が出かかった。異次元から来たという事を差し引いても どうツッコミを入れたらいいのかがわからなかった。
◆
その後 何度か論議を重ねたが、無理やりにも感じる利己的な理論を立てて話すイルミは 全く出て行く気配がなかった。
半ば諦め美結は大きな溜息をついた。
大股で玄関に向かい、転がったままのスーパーのレジ袋から中身が崩れた弁当を取り出した。
無一文の不審者に食事まで振る舞う気にはなれるはずもなく「悪いけど今家に何もない」と言うと、「しばらく食べなくても問題ないから気にするな」と、どこまで本気かもわからない回答が返ってきた。勝手にくつろぎだす男は ソファから大いにはみ出す脚を組み替えていた。
「テレビ見てもいい?」
「……どうぞ」
「つけてくれる?」
リモコン位置や操作がわからないとは言え 指示をされるとムカつくものだ。テーブル下に伸ばした手先でぷつんと電源ボタンを押す。
謎の男は画面を見ながら時折「あれは何だ、ここは何処の国か、あれはどういう意味か」等 子供のような質問を投げてくる。それに適当に答えながら 美結は流し込むように弁当を平らげた。
先週末の土曜日はキープ男と終日デート、日曜は終電まで女友達と呑んでいたし まだその疲れが身体に残っている。
今日はお気に入りの入浴剤でも入れてのんびり半身浴の予定だったのに 不審者のいる部屋では入浴すらする気分になれなかった。
洗面所で洗顔と歯磨きのみを済ませ まだ9時前だというのに寝室に引っ込む準備をはじめるしかなかった。
嫌味ったらしく、招かれざる客の目の前で月9の録画予約をする。