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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第6章 風邪をひいた土曜日


土曜日。

美結は窓の外から聞こえる雨の音で目を覚ます。昨晩もかなり降っていたが それよりも更に強くなっているような気がした。

土曜だというのに早い時間に目覚めた感覚だった。枕元のスマホで時間を見ようとしたら充電切れ、遅くまで飲んでいたせいか酷く喉が渇いているし、頭がクラクラする。

昨晩は重い空気のまま すぐにシャワーだけの入浴を済ませさっさと寝室へ引っ込んだ、イルミと顔を合わせるのは昨日の朝とは違う意味で気まずかった。
おそらくはまだ早朝であるし 水分補給をしてからもう一眠りしたい所だが キッチンへ行くにはリビングを通らなければならない。

「……」

それでも仕方なしに身体を起こし静かに寝室を出る。

イルミを一切見ないままキッチンへ直行し 冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出した。冷たいペットボトルがやたら火照る手に ひやりと気持ちいい、水を一気に半分程飲んだ。


そういえば週末は何処かへ出掛けようと楽しみにしていた筈。なのに外は雨、イルミとは喧嘩同然に気まずい雰囲気、加えて二日酔いなのか微妙な体調不良が 当初の予定を否定するように拍車をかけてくる。
美結はふらつく足を早々動かし 寝室のベッドへ潜り込んだ。


「ミユ 入っていい?」

ノック音と共に聞こえた声にパチリと目を開く。初日に寝室には立ち入らないと言い ずっとそうしていたイルミがあっさりそれを覆すのだから驚くのも無理はなかった。

昨日の話の続きかと思うと気持ちが重くなる。普段は然程感じないが 言い合いになるとやたら口が達者であるイルミには勝てる気がしない。仲直りのきっかけと捉える事も出来ずについ返事を黙ってしまう。

「ミユ いい?」

「………」

「入るよ?」

「………」

そういえば早いもので共同生活ももう5日目。
互いの事もだいぶわかってくるし イルミは 美結の押しに弱くノーと言えない典型的日本人気質を理解した上で やっているのではないかと思ってしまう。

美結は布団を目元ギリギリまで被ってから 小声で返事を返した。

「……………いいよ」
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