第5章 勝負合コンの金曜日
「ミユはさ、恋愛ごっこが出来れば相手は誰でもいいの?」
イルミは美結を振りほどき振り返る、そして美結に向かい合った。
「そ、そんな事ない……っ」
「たまたまミユの部屋に来たのがオレで、たまたま同じ帰り道だったのがさっきの男。違う?」
イルミは最もな事を言うと思う。しかし美結にも反論したい事がある、眉を寄せながらイルミに思いを告げる。
「違うよ!!誰でもいいなんてそんな事ある訳ないでしょ…っ!今日だってほんとは……ほんとは……っ」
「なに」
「…今朝から…違う、昨日の夜から…ほんとは私イルミと一緒にいたかった……!」
「それが本当なら言ってる事とやってる事が矛盾してるよね」
「それは……。だから、色々事情も…あるし……」
自分の意見を正確に相手に伝え それを貫く事が苦手。
伊織のようにはっきりしているイルミにそれを理解出来るのかわからず 美結は逃げるように目線を下に向けた。
「ミユが何を考えてるのかオレにはわからないけど」
イルミは美結に一歩距離を寄せる。反射的に身体が引け 背中に固い玄関ドアが触れるのがわかった。
イルミの視線が濡れて冷えた身体に落ちた。
それには気付かぬ顔をしたまま不安気にイルミを見上げた。
透ける薄いブラウスはピタリと肌に張り付き 身体を強調させる、白は下に着たキャミソールや下着までを簡単に浮き彫りにしているだろう。
例えばこのまま イルミに主導権を渡した荒っぽいセックスでカタがつくなら安いかもしれない。そんな卑しい考えすら起こった。
「ミユさ」
「……っ、」
イルミの表情こそいつもとさして変わらぬ訳で、彼の方が何を考えているのかわからないと思う。でもきっと、雰囲気から察するのは 今現状を快くは思っていない事だ。
「あんまり男を舐めない方がいいんじゃないの?」
「……そんなつもりは……」
イルミは美結から離れる。洗面所からバスタオルを持ち出し それを美結の頭に放るようにかけた。
タオルで隠れた美結の表情は 叱られた子供のように歪んでいた。