第5章 勝負合コンの金曜日
個室に入り、飲み会がスタートする。
今日のお相手は某大手航空会社の若手パイロット達だ。肩書きは立派であるが、それに引けを取らず見た目もノリもメンバーそれぞれに悪くはない。言い換えれば合コンに慣れている、そんな印象だった。
「美結ちゃん隣いい?乾杯しようよ」
「うん。いいよー」
飲み始めて1時間強、ある程度酒が入ってきたタイミングで定番の席替えタイムとなる。
隣に座ってきたのは見た目の第一印象で次点と品定めをした男、そこそこ背も高く笑顔が素敵な青年だった。一番賞をつけた男は伊織にしきりに話しかけている、今日はわざわざそれをひっくり返す気もないし隣の男とグラスを交わす事にする。
「美結ちゃんてお酒強いの?」
「ん~ そんなにはのめないなぁ」
本当はそこそこ呑める。これももちろん“嘘も方便”というやつだ。美結はマニュアル化されている通り一遍の話しをはじめた。
一次会はあっという間にお開きとなる。時計の針は22時を指していた。
「二次会どーする~?」
「カラオケ?飲み屋?ダーツでも行く?」
店の外はすでに夜に落ちている。金曜の帰宅にはやや早い時間帯という事もあり、幹事同士が二次会についてを話し合っている。美結はその少し後ろで、そろそろ帰宅をするかを考えだしていた。
一通り全員と話したし連絡先も聞かれ交換済みだ。収穫するものはあったと思う。
明日は休みであるし帰宅したとしても時間帯もそこまで遅くない。帰ってからイルミを巻き込み飲み直してもいいし、レンタルショップでDVDを借りてみるのもいいかもしれない。
どう帰宅を切り出そうかタイミングを探していると、横から先ほどの男が声をかけてくる。
「美結ちゃんはどこ行きたい?二次会」
「えっと……ね」
点数でいえば今日の合コンは高得点、二次会への流れは当然である。自分以外のメンバーが盛り上がる中、“今日はもう帰るね”の空気を読めない一言を なかなか言えないでいた。
「二次会はカラオケだって。行こうよ」
「ん?…うん…」