第1章 あなたと出会った月曜日
8畳リビングの入り口とソファで硬直状態が続く。
「キミ 歳いくつ?」
「…先月で24」
「同い年なんだ見えないね 十代かと思った」
幼く見られるのは童顔のせいだろう。言われ慣れた台詞であるし反射的に「そんなことはない」と謙遜を含めた定型文を返すと「落ち着きの意味で、」と言われ 片頬がピクリと上がる気がした。
「お互い大人だし取引って事にしようか。勿論タダでとは言わない金は払うよ。ここは対して広くもないからそうだな…一泊20万でどう?」
「はぁ……っ?!」
「20万」
美結の目がキラリと光る。20万×7泊=140万(税なし)これは願ってもない臨時収入である。
それなりに流行りの服が着たい、ネイルもヘアも定期的に手入れをしたいし、週に一度くらいはお洒落なカフェで食事だってしたい。これだけあれば海外旅行に行けるどころかエステにだって通える。何にせよ お金はいくらあっても困らない。
とはいえ 冷静な自分だっている。怪しい男と狭い家に一週間、しかも泊めるだけにしては高額の金を払うと言う点が そこによからぬ意味を持たせる気がする。真相は否、見極めるべくイルミを見た。
不信感丸出しの美結の様子を意図を汲んだのか、イルミは「ただ居させてもらうだけ。ミユの留守中含め 寝室には絶対に立ち入らない事を約束する」とより好条件を提示してくる。
心で天使と悪魔が議論する思いだった。たった一週間我慢すればいいだけの副業にしては悪い話ではない、しかし一般的に考えれば裏があるとしか言いようがない。
返答を迷っているうちに、イルミが勝手に答えを出してしまう。
「あ、ここは異次元なんだっけ。そういえば携帯もつながらないし支払い云々も出来ないのか」
「え」
「一応聞くけどトウキョウトミナトクの通貨の単位何?」
「通貨?……円?」
「やっぱり。ジェニーじゃないんだ」
ドルやユーロ、メジャーなものは知っているがジェニーとは聞いたことがない。手にしていたスマホで一応ググってみるがそんな単位は存在しなかった。
嫌な予感がした。では先程の取引はどうなってしまうのか。
イルミは目の前で携帯電話の電源を切り それをソファ前のガラステーブルに静かに伏せ、腕と足を組んでしまう。
急に黙り込むイルミを見ながら 美結は疑念を恐る恐る口にした。