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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第4章 デートの木曜日


【着信 伊織】

着信相手は友人の伊織、十中八九 明日の合コンの用件だろう。今の今まで 明日にそんな予定が入っていたことすらすっかり忘れていた。

出るかどうかを迷っていると 部屋に灯りがつけられた。酔いを断ち切る蛍光灯の眩しさに美結はきつく目を細めた。

イルミをちらりと見てみれば 向こうは向こうでこちらを伺っている。美結は部屋の隅で伊織からの電話を取った。

「……もしもし伊織? ごめん返信してなくて、……」


伊織との電話はほんの数分、用件は想像通り明日のコンパの件であった。

最近LINE連絡すらまともに返していない美結に「明日は本当に大丈夫なのか」と確認を入れる内容であった。
幹事である伊織からすれば出欠確認は当然のこと、人数に狂いが出ると合コンの場は一気に盛り上がりに欠けてしまう。

電話を終える頃には美結の頭に現実感が戻ってくる。

明日は勝負を賭けたい合コンであったが 今の状況では優先順位が変わってしまった。他にやりたい事もあるし一緒に過ごしたい人がいる。
一層断ってしまいたい気もするが、物事に波風を立てるのが苦手なタイプの美結には 今更のドタキャンをする勇気もない。


「…うん。…うん、わかった…じゃあ明日」

電話を終えた。
イルミを探せば 先ほど2人でなだれ込んだソファに 何事もなかったかのように腰かけている。雰囲気を崩してしまったことを 美結は一応謝罪した。

「ごめんね……友達だった」

「そう」

このままあっさり終わりというのも複雑ではあり 困った顔でイルミを見る。

イルミは頭を背もたれに託し ゆるんだ態度で美結を見返してきた。やはり電話は不愉快だったのか、横顔と向けられる視線だけは イルミらしくなくえらくシャープに見える。


「どうする?」

「……え……?」

「続きしたい?」

「………………」
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