第4章 デートの木曜日
終わりの来ない螺旋動は 徐々に深くなる。
心を満たす幸福感が焦れったい興奮に変化するのもあっという間で、目の前がぼんやり潤みだしてくる。自然と眉間に力が入り理性を崩す感覚に 本能的な拒絶反応が出る。
「…っ……イルミ……待って」
「なに?」
「…………なんか………あの…」
「そんな顔もするんだ」
「……………………ッ」
「ちょっと意外だった」
こうして目を合わせているとどうしようもなく引き込まれてしまう気がする。イルミの眼差しは 熱い情熱を秘めたようには到底見えないのに、どくどくと心臓がざわめき立てられる。
「……っぁ……」
鎖骨の上あたりにイルミの唇が触れる。鼻先が首筋を掠め、自分でもぞくりとするくらいに切ない声が出た。
体重を乗せられる。美結の身体は簡単にソファに沈んでしまう。間接照明を遮るイルミの身体は見た目よりも重く、頬にかかる長い髪が少しこそばゆかった。
度々顔が近付いてくる。
突如、静かな部屋にスマホのバイブレーション音が響いた。
イルミは素早く身体を起こし 機械音に目を向ける。ソファ横に無造作に置かれた通勤バッグの中からは 白色光が漏れていた。それは鳴り止む気配がない。
「電話じゃないの?」
「…うん…」
「出なくていいの?」
「………」
このタイミングでは邪魔としか言いようがないが 鳴り続けている以上 無視するわけにもいかない。内心深い溜息をつきながら 美結は甘くうだる身体を起こし、バッグの中からスマホを取り出した。