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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第1章 あなたと出会った月曜日


謎の男はここに来るまでの経緯を話し出した。
仕事の最中にある能力者(敵?)と闘う事になり 不覚にも特質系と思われる念(攻撃?)を受け この世界、つまりは男にとっての異次元に飛ばされる羽目になったと言う。SFは現実とでも言いたいのか その表情は始終真顔を極めていた。

「とにかくその能力者の話だと丸一週間で解除はされるらしいんだ。その間はここにいさせてもらっていい?」

「え…ここって…」

「ミユの部屋。座標がどうのとか言ってたからおそらくは空間移動、この部屋の存続が維持出来ないと 最悪帰れなくなったら困るし」

「ちょっと待って!意味がわからなくなって来たんだけど…」

「間取りは確認した。大丈夫」

何が大丈夫だと言うのか。
確かに、この部屋は1人暮らしにしては贅沢な1LDK。服や靴やバッグなど荷物の多い美結にはこれくらいの広さが欲しく今年に入り思い切って借り始めた部屋だ。寝室とリビングの二部屋があるという点では最低限のプライベートは保持されるかもしれないが 当然家賃もそこそこ、異性を引き込む為にこの部屋を借りている訳ではない。美結は首を横に振る。

しかしイルミも引かない。飛ばされた先がたまたまここであっただけでこの場にいるのは自身の当然の権利だと言い分を主張する。
このままでは水掛け論 そんな時、握り締めたままになっていたスマートフォンがバイブレーションを奏でる。

「電話?どうぞ」

手のひらをスッと差し出し一言告げるイルミを見てから 携帯電話の画面を確認する。電話主は出身県広島の母だった。そういえば仕事中にも着信があり折返しをしていなかった事を思い出す、美結は渋々電話に出た。

「母さん?何の用?…………今それどころじゃないんじゃってば大変なんじゃけ!!んな話ならまた後にして!わかっとるよ次の休みゃあなるべく帰るようにするけ、あああもうわかったけえ!もう切るよ!じゃね!」

ぶちりと電話を切った。まるで黒縁コンタクトでも仕込んでいるのかと問いたいほどの大きな黒目がこちらへ向けられていた。

「二重人格なの?」

「悪かったね訛ってて」

地元の人間と話す時はつい素が出てしまうものである。日頃隠してはいるが時たまそれがばれた時は ギャップネタとして照れ笑いのひとつでも浮かべる所だが さすがに今はそんな余裕はない。
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