第4章 デートの木曜日
「ただいまぁ~」
その後、無事に帰路へ着く。
美結はアパートのドアを開けた。帰り道の途中にふざけ半分に脱いだピンヒールのパンプスを 玄関に無造作に置く。
ふわふわする足でリビングに向かい ソファに倒れ込む。うつ伏せに身体を沈めた。
「んー…さすがに眠い…」
パチリと照明スイッチの音が耳に届く。蛍光灯が思い切り目に染みチカチカする、美結は瞳を細くした。
「まぶしいよ~電気つけないで~」
「そのまま寝る気?」
「寝ないよ メイクも落としてないし……寝ないから電気消して?」
照明が切り替わり部屋が淡い褐色に包まれた。教えた訳ではないが イルミは間接照明を覚えていたみたいだ。
薄目でそれを確認してから 美結は頭を起こした。
「…久しぶり」
「なにが?」
「最近イルミがソファ占領してるから。ここに座るの」
「寝てるって言わない?その体勢」
「ん~確かにね……」
ふふと笑い、美結は身体をひっくり返した。仰向けになればとろけた瞳にイルミの姿が映ってくる。
「………ねえイルミー」
「なに?」
「呼んだだけー」
「なにそれ」
こうして見つめ合う空間はなんとも言えずに高揚を呼ぶ。
甘い態度でソファに横たわる美結を、相変わらずの澄まし顔で見下ろしてくるイルミの視線はとても痛くて心地いい。
美結は両手を伸ばし、ころんと愛らしい声を出す。
「…ねえ 起こして…?」