第4章 デートの木曜日
あれから。
大衆向けの忙しない飲み屋とは違い、食事を終えたからと追い出される事もなく のんびりデザートまでを食べ終えた。
途中で何度か酒を追加し、他愛ない話をしながら 長々その場に居座ることとなる。
「いっぱい食べたし久々に飲んだ〜 ホントお腹いっぱい!」
「ダイエットは?」
「……イルミってさー 好きな子苛めちゃうタイプでしょ」
「まさか。好きなヤツを苛めたりはしないよ」
「なら無意識に追い詰める方だ、一番タチが悪い」
美結はぷいと顔を反らせて見せた。
腕時計に目を落としてみればもう22時を過ぎている。
美結の声に柔らかさが混ざる。
「……どうしようか これから」
「そうだね 食事終わったし帰る?」
「え~ もう?」
「まだ何か食べるの?」
「食べ物はもう入んないよ!イルミは?まだ食べられるの?」
「食べようと思えばね」
「なにげによく食べるよねイルミ…太らないの?」
「うん。消費してるし」
「……うらやましい~……」
美結はスマホを取り出した。
ラインの未読メッセージが複数個あるがそれを無視したまま 開くのはブラウザだ。東京タワーの営業時間を調べてみれば 案外遅くまで利用出来る事がわかった。
せっかく近くにいるし機会がなければ登らないしと理由を重ね、美結はイルミを連れて早々店を後にする。
涼やかな夜の空気はとても気持ちがいいものだ。
歩道の隅で、伸びをしながら大きくそびえるタワーを見上げてみる。
「見てー東京タワー!夜だしライトアップされててキレイ~!」
「何メートルあるの?」
「333。登りに行こうよ、ここからは直線だしあそこまで競争しよ!」
「いいけど。どれだけミユにハンデがあっても負けないよオレ」
まだ車の多い道路の脇を通り、オフィス街を抜ける。
東京タワーまでやって来た。