第4章 デートの木曜日
「意外と信用ないんだな」
「え?」
「ミユみたいな普通のコにまさか安全面の心配されるとはね」
「…だって心配なものは心配なんだもん…」
ぼこぼこと大きなエアーの溢れる生け簀の前で、神妙に見つめあってしまった。
先に目を反らせたのはイルミだった。
水面が派手に揺れる水槽にぺたりと掌を付き またもフグを観察しだす。中を覗き込む仕草だけはあどけない子供みたいだった。
「いいよ。わかった」
「…ほんと?」
「ここにいる間はもうそういうことはしない」
「…絶対?」
「うん」
「じゃあ 約束」
左手の小指を差し出してみる。
それは何かと質問が入るかと思いきや、イルミはするりと美結に小指を絡めてきた。
「……あれ 知ってたの?」
「うん。指切り、でしょ」
自然に交わされる指切りは両世界で共通みたいだ。
殺し屋だなんて物騒な事をしているとは到底思えぬ白い指先を、第一関節でくるんと捕まえてみる。
美結の口元が緩くなる。
「約束ね。」
「わかってる」