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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第4章 デートの木曜日


外食デートを言い出したはいいが どこに行くかは決めていなかった。せっかくなので東京らしい景色のある所がいいかと思い 地下鉄で数駅移動をし、 東京タワーが近くに見えるエリアまでやってきた。

繁華街やテーマパーク、案内したい所はいくつか思いつくが 土日にも出掛ける事は出来るし 今夜は無難に 国を象徴する建物のある場所でもいいだろう。

あたりはどんどん暗くなる。
夜になれば周りのオフィス街はキレイにライトアップされ色付いていくし、そこそこの雰囲気も出ると思う。美結は東京タワーを指差した。

「あのタワーはこの国のシンボルっていうか観光地みたいなものなの。実は私も近くに住んでる割に来たことはないんだけど」

「この上ってどうなってるの?」

「展望台。後で登ってみようか」

「闘技場があるわけじゃないんだ」

「闘技場ってなにそれ。空手でもする気?」

「カラテって?」

世界そのものが異なる故に 話していると新しい発見や驚かされる内容も多い。デートさながらに歩いていれば 会話が弾み話題が尽きることもない。

地下鉄の改札から地上へ出る。
人で溢れる広い横断歩道を渡り、飲食店が立ち並ぶ通りを進んだ。
何か希望はあるかとイルミに問えば「任せる」と一言、半ば予想通りの返事が返ってきた。

美結は店先を見渡した。
デートらしく小洒落た飲み屋にでも入るか、家では食べられない異国料理を扱う店舗に入るか。

そんな事を考え少し歩みをゆるくする。隣にいたはずのイルミがある店先でピタリと足を止めていた。


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