第4章 デートの木曜日
今朝は珍しくキッチンで火を使う。
理由は昨晩やたら大量に刻まれたキャベツを消費したいがゆえだ。今夜は外食、明日も予定があるし痛ませてしまっては勿体無い。
卵と残った豚バラ肉を追加し、オムレツのようなものを作り上げる。ついでにプレーンヨーグルトに昨晩食べ損ねた冷凍ブルーベリーを乗せ リビングのテーブルに運んだ。
「はい 朝ごはん。卵は半分こね」
「なにこれ」
「シェフの気まぐれ創作オムレツ?ちょっと崩れちゃったし味は未保証だけど」
「オレ何食べても腹壊したりしないから平気」
「…そこまで酷くはないと思うけど…」
変な物が入っている訳ではないし 味付けも無難。そこそこ美味しく出来ている自信はあった。
向かい合い卵料理を食べながら 美結はイルミを真っ直ぐ見つめる。小難しい顔に頬杖をつき ぽつりと呟いた。
「…チャコールグレイよりもうちょっと明るい色でもよかったかな…」
「服?」
「うん」
「どっちでもいいよ。着心地としてはさっきの部屋着の方が断然いいけど」
「あれサイズあってないし。足首出過ぎだし」
「これも若干短いけどね」
「うわっ 足長いですアピール?」
「事実を言っただけだけど」
一昨日の夜、美結が選んだのは Vネックのカットソーと何にでも合いそうな黒いシンプルなパンツだ。
個性的なヘアスタイルを差し引いても そこそこサマになっているのは身長と体型のおかげなのだろうか。癖のない服をさらりと着こなすとは 羨ましい限りである。
『次はお天気情報で~す!今週後半は降り模様、お洗濯はどうぞ今日のうちに!週末の関東エリアは広範囲に渡り雨予報となっており…』
イルミはお天気お姉さんの天気予報を見ながら フォーク一本で卵を切り分け上手に食べていた。美結も横から不思議な形のオムレツに手を伸ばす。