第4章 デートの木曜日
木曜日。
週の疲れが溜まってくる頃とは言え もちろん仕事は待ってはくれない。昨晩は夕食後に話し込んだり持ち帰った業務をこなしたりで 当然寝たのが遅い。朝に弱い訳ではないが、急かされると無駄な足掻きをしたくなるものだ。
起床時間を知らせるスマホを放置し美結は布団に深く潜っていた。すると別の角度から 定間隔のノック音が聞こえてくる。
「朝だよ」
「……」
「起きないの?」
「……」
「ミユ」
イルミの声を無視すれば ようやくノックの音が止む。
「!!!」
次の瞬間、襲ってきたのはノックとは言い難いレベルの音だった。拳でもって扉を叩きつけたのか ドアが振動しているではないか。危機感を覚え がばりとベッドから飛び起きた。
「起きなよ。」
「…わかってる…」
目をこすり過度に眠気アピールをしながら寝室のドアを開けた。そこには朝っぱらからしっかり目を開いたイルミがいる。欠伸を噛み殺せばふんわり涙が浮かんできた。
「……起こしてくれるのはありがたいんだけどもうちょっと優しく起こして?」
「十分優しいと思うけど」
イルミの持つ優しさ基準に明確な線引きをするのは怖いので そのまま洗面所へ向かった。
天気予報を思い出し 美結は溜まった洗濯物を洗濯機に入れた。明日金曜日は終日曇り、そして週末は雨予報だ。
普段は土日にまとめている洗濯だが 同居人がいるので当然量が増えてくる。
美結はイルミの着ていたスエットをちょんちょん引っ張った。
「洗濯するからこれ出して。お好み焼きの臭いついてるでしょ」
昨晩新しい服も届いたしちょうどいい。それを渡してから洗面所を指さし、向こうで着替えてと指示を出した。
「服入れたらフタして開始ボタン押しておいてー」
「開始が読めないんだけど」
「ん~と 丸い青い大きめのボタン!」
そう声を張りながら、美結はキッチンに立った。